オリーブ盆栽ルッカの幹を切り戻した跡と、その脇から伸びる枝葉 GORI STORE TOKYO

オリーブ盆栽の幹の「切り口」は欠点? 切り戻しで太い幹をつくる仕立てと、傷跡の見方・扱い方【GORI図鑑】

こんにちは、GORIです。

オリーブ盆栽を見ていて、「あれ、幹の上が切れている」と気づいたことはありませんか。お店でも「これ、傷んでいるんですか?」と聞かれることがあります。答えは「いいえ、それは仕立ての跡です」。

今日は、香川・創樹(そうじゅ)から届いたオリーブ「ルッカ」の小品盆栽を例に、オリーブ盆栽の幹にある「切り口」の正体――なぜ切るのか、切り口はこれからどう変わっていくのか、家ではどう扱えばいいのか――をお伝えします。

この記事の要点

  • 幹の切り口は、多くの場合「切り戻し」という仕立ての跡。傷みや失敗ではない
  • 盆栽では、一度枝や幹を伸ばして太らせ、あとで切り戻して低い位置から枝を出させる
  • オリーブは古い幹からも芽を出しやすく、この仕立てに向いた木
  • 切り口は年月とともに周りの樹皮が巻き込み、表情が変わっていく。家では「いじらない・はがさない」が基本
  • 切り口は欠点ではなく、その一鉢が歩んできた時間の記録。見どころとして楽しむ

オリーブ盆栽ルッカの幹を切り戻した跡と、その脇から伸びる枝葉 GORI STORE TOKYO

オリーブ盆栽の「切り口」とは?

写真の一鉢を見てください。斜めに伸びた太い幹の先に、スパッと切られた大きな跡があります。そして、そのすぐ脇から細い枝が出て、葉を広げています。

これは、生産者が幹を途中で切り戻した跡です。オリーブ(学名 Olea europaea、モクセイ科オリーブ属の常緑樹)の盆栽では、とてもよく見られる仕立て方のひとつ。切り口があるのは、その株が「つくられてきた」証拠でもあります。

なぜ、わざわざ幹を切るのか

盆栽の幹を太くするいちばんの近道は、枝や幹を自由に伸ばして、葉をたくさん茂らせることです。葉が多いほど木はよく育ち、幹が太っていきます。

ただ、伸ばしたままでは背が高くなりすぎて、盆栽の姿になりません。そこで、十分に幹が太ったところで高い位置でばっさり切り戻し、切った場所の下から新しい枝を出させます。こうすると、

  • 背は低いまま、幹だけが太い
  • 根元から上に向かって細くなる、古木らしい幹のかたちになる
  • 新しい枝を、低い位置から好きな方向に育て直せる

という「小さいのに古い木」の姿がつくれます。小さな鉢の中で古木の雰囲気が出せるのは、この切り戻しを何度も重ねているからです。

オリーブがこの仕立てに向いている理由

オリーブは、古い幹や太い枝からも新しい芽を出しやすい木です。思い切って切り戻しても、切り口の近くから芽が吹いてくる。だからこそ、太い幹を切って低い位置で枝を作り直す仕立てができます。

オリーブのふるさとは、地中海沿岸の乾いた丘。夏の強い日差しと乾燥、冬の雨にさらされながら、何百年も生きる木です。品種ルッカは、イタリア・トスカーナ生まれ。寒さや病気に強く育てやすいことから、観賞用としても多く生産されています。

オリーブ(ルッカ)の原産地マップ 地中海沿岸 ─ イタリア トスカーナ生まれ 夏の乾燥と冬の雨 GORI STORE TOKYO

切り口は、これからどう変わる?

木は、切られた部分を自分でふさごうとします。切り口のふちから少しずつ新しい組織が盛り上がり、周りの樹皮がゆっくりと内側へ巻き込んでいきます。太い切り口ほど時間はかかり、何年もかけて形が変わっていきます。

切り口を乾燥や雑菌から守るために、生産者が癒合剤(ゆごうざい)という保護剤を塗ることもあります。癒合剤には色のついたものもあるので、切り口の色が周りと違って見えることがありますが、心配はいりません。

盆栽の世界では、大きな切り口をあえて彫り込み、白っぽい枯れた木肌を見せる「舎利(しゃり)」や、幹のくぼみ「ウロ」として景色にすることもあります。どう見せていくかは、その木の持ち主次第。切り口は「これからの景色の入り口」でもあるのです。

オリーブ盆栽ルッカの根元 皮目のある太い幹と幹に沿って下りる根 GORI STORE TOKYO

家での扱い方:切り口まわりの3つの約束

  1. いじらない・はがさない。切り口のふちや、塗られた保護剤を指でこすったり、はがしたりしないでください。巻き込みの邪魔になります。
  2. 切り口に水を溜めない。水やりは株元の土に。上からシャワーのように幹へかけ続けるより、土に注ぐほうが安心です。
  3. すぐ脇の枝を大切に。切り口の近くから出ている枝は、これからの樹形の主役です。切り戻しの剪定をするときも、この枝は残してください。

大きな剪定は、オリーブが動き出す前の春先(2〜3月頃)が目安。成長期の軽い枝先の整理は、伸びすぎた枝を切る程度で十分です。針金での形づくりについては針金かけの回にまとめています。

今日の一鉢:傾いた幹と、雨だれ模様のセメント鉢

オリーブ盆栽 ルッカ 小品 香川・創樹の一点物 大きく傾いた太い幹の全体 彫り模様のセメント鉢 高さ約25cm GORI STORE TOKYO

今回の一鉢は、高さ約25cmの卓上サイズ。根元から斜めに立ち上がる太い幹は、ごつごつとした皮目に覆われ、側面には一本の根が幹を伝って土へ下りています。そしてその先に、切り戻しの跡と、そこから芽吹いた枝葉。「切られて、また伸びた」時間が、そのまま形になっています。

器は、チャコールグレーの地に雨だれのような彫り模様が入ったセメント鉢。セメント鉢は重みがあるので、幹が大きく傾いた株でも据わりがよく、卓上でも安定します。鉢底穴があり、お皿も付いています。

チャコールグレーに雨だれのような彫り模様のセメント鉢のアップ 鉢底穴あり お皿付き GORI STORE TOKYO

基本の育て方

置き場所 特に風通しがよく、日当たりの良い場所。室内なら、いちばん明るい窓辺へ
水やり 土の表面がしっかりと乾いたら、鉢底から流れ出るまでたっぷり。お皿の水は捨てる
耐寒性 0℃(今回の株)。冬は霜や凍結に当てず、日当たりのよい室内へ
剪定 大きな剪定は春先(2〜3月頃)。成長期は伸びすぎた枝先を整える程度
切り口 いじらない・はがさない・水を溜めない

小さな鉢での水やりや冬越しのコツは小さなオリーブ盆栽の育て方、盆栽の幹や根の見方はネバディロブランコの回、品種ルッカそのものの話はルッカの回もあわせてどうぞ。

よくある質問

Q. 切り口から木が腐ってしまうことはありませんか?

A. 日当たりと風通しのよい場所で、切り口に水が溜まらないように育てていれば、過度に心配する必要はありません。ただ、切り口のまわりがぶよぶよと柔らかくなる、黒く湿ったまま広がっていく、といった変化があれば、お早めにご相談ください。

Q. 切り口の色が周りと違うのはなぜですか?

A. 切った断面の木肌が見えているか、切り口を守るための癒合剤が塗られていることが多いです。時間とともに色はなじみ、周りの樹皮が少しずつ巻き込んでいきます。

Q. 自分で太い幹を切り戻してもいいですか?

A. 太い幹の切り戻しは、木にとって大きな負担です。どこから芽が出るかを見極める経験も必要なので、はじめのうちは伸びた枝先を整える程度にとどめるのがおすすめです。大きく形を変えたいときは、ご相談ください。

Q. 切り口のある株と、ない株、どちらを選べばいいですか?

A. 好みで選んで大丈夫です。切り口のない株はすっきりした印象、切り口のある株は「手をかけて育てられてきた時間」が見える印象。GORIは、切り口のある株のほうが、その木だけの物語が見えて好きです。

Q. 贈り物にしても大丈夫ですか?

A. はい。オリーブは古くから平和や豊かさの象徴とされ、新築祝いや開店祝い、退職祝いにも選ばれています。贈るときは「この切り口は仕立ての跡なんです」とひとこと添えると、会話のきっかけにもなります。

GORI STORE TOKYOのオリーブ盆栽 ルッカ 小品(創樹・セメント鉢)

今回ご紹介した一鉢は、GORI STORE TOKYOのオンラインストアでご覧いただけます。香川・創樹が仕立てた、高さ約25cmのオリーブ盆栽ルッカ。雨だれ模様のセメント鉢(鉢底穴あり・お皿付き)入りで、同じものは二つとない一点物です。

▶ 創樹 オリーブ盆栽 ルッカ 小品(彫り模様のセメント鉢)を見る

▶ GORI STORE TOKYOのオリーブの木の一覧

※一点物のため、売り切れの際はご容赦ください。植物は生きものですので、時間と共に変化いたします。

きれいに整っていることだけが、木の美しさではありません。切られて、それでもまた枝を伸ばしてきた跡。その一本の線に、木が生きてきた時間が刻まれています。欠点に見えるところこそ、その一鉢の顔です。

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