こんにちは、GORIです。
オリーブ盆栽の根元を見て、「あれ、根っこが土から出ている」と思ったことはありませんか。お店でも「植え付けが浅いんですか?」と聞かれることがあります。答えは「いいえ、わざと見せているんです」。
今日は、香川・創樹(そうじゅ)から届いたオリーブ「ルッカ」の小品盆栽を例に、盆栽の樹形のひとつ「根上がり(ねあがり)」――どんな姿のことか、どうやってつくられるのか、家ではどう扱えばいいのか――をお伝えします。
この記事の要点
- 「根上がり」は、根の一部を土の上に出して、幹の一部のように見せる盆栽の樹形
- 植え付けの失敗ではなく、時間をかけて土を少しずつ下げてつくる仕立て
- 根元が広がる「根張り」とは別もの。根上がりは根が「脚」のように立ち上がる
- 土の上に出た根は、年月とともに樹皮をまとい、幹のような表情に変わっていく
- 家では「埋め戻さない・水を勢いよく当てない・植え替えで高さを変えない」が基本

オリーブ盆栽の「根上がり」とは?
写真の一鉢を見てください。幹の根元が何本にも分かれ、土の上に姿を見せたまま、鉢の中へ下りています。まるで小さな木が、脚を踏ん張って立っているような姿です。
これが盆栽でいう「根上がり」。本来は土の中にある根を地上に出し、幹の一部のように見せる樹形です。海辺の岩場や、土が流された斜面で、根をむき出しにしながら生き抜いている木の姿を、鉢の中に写したものといわれています。
「根張り」とはどう違う?
よく似た言葉に「根張り(ねばり)」があります。
- 根張り:幹の根元から、太い根が四方へ放射状に広がり、土をつかんでいるように見える姿。どっしりとした安定感が見どころ
- 根上がり:根が土の上に持ち上がり、幹を下から支える「脚」のように立ち上がる姿。軽やかさと、厳しい環境を生き抜いてきたような野趣が見どころ
どちらも、盆栽で根元を見せるための大切な要素です。根張りの一鉢については小さなオリーブ盆栽の育て方でも紹介しています。

根上がりは、どうやってつくられる?
根上がりは、一度に根を掘り出してつくるものではありません。一般的には、深い鉢で根を長く伸ばしておき、植え替えのたびに少しずつ土の位置を下げて、根を地上に出していきます。急に根を出すと乾燥で傷んでしまうので、木の様子を見ながら、年単位で進める仕立てです。
地上に出たばかりの根は、細く柔らかい色をしています。それが空気と光に当たるうちに、少しずつ樹皮をまとい、太さを増し、幹と見分けがつかないような表情に変わっていきます。根上がりの根は、時間をかけるほど「幹」になっていくのです。
オリーブが根上がりに向いている理由
オリーブ(学名 Olea europaea、モクセイ科オリーブ属の常緑樹)は、乾きに強く、丈夫な根を持つ木です。ふるさとは地中海沿岸の、水はけのよい乾いた丘。夏の強い日差しと乾燥にさらされながら、何百年も生きる木です。
品種ルッカは、イタリア・トスカーナ生まれ。寒さや病気に強く育てやすいことから、観賞用としても多く生産されています。香川県は、瀬戸内の温暖な気候を活かしたオリーブの産地。創樹は、その香川で盆栽の技術を活かしたオリーブを仕立てています。

家での扱い方:根上がりの3つの約束
- 埋め戻さない。「根が出ていてかわいそう」と土を足したくなりますが、それでは樹形が崩れてしまいます。今の土の高さのまま育ててください。
- 水を勢いよく当てない。水やりは、土の上に出た根に直接かけるのではなく、株元の土に静かに注ぎます。勢いよくかけると、根のまわりの土がえぐれてしまいます。
- 植え替えで高さを変えない。植え替え(目安は2〜3年に一度、春)をするときも、根の出ている高さは今のまま。深く植え直さないことが大切です。不安なときは、ご相談ください。
根に緑色の苔がついていることがありますが、オリーブを傷めるものではありません。古木らしい風合いとして楽しむのがおすすめです。幹にある丸い跡が気になる方は、幹の切り口の回もどうぞ。
今日の一鉢:脚を踏ん張る、二つの顔を持つルッカ

今回の一鉢は、高さ約25cmの卓上サイズ。根元は何本にも分かれ、苔をまといながら土の上に立ち上がっています。
面白いのは、見る向きで表情がまるで変わること。正面から見ると、幹に丸い切り口が二つ並び、小さな生きものがこちらを見ているような、どこかユーモラスな顔つき。横に回ると、根を脚のように踏ん張って、斜めにぐっと伸び上がる古木の姿になります。
器は、チャコールグレーの地に雨だれのような彫り模様が入ったセメント鉢。白っぽい根上がりの幹とシルバーがかった葉が、落ち着いた器の色によく映えます。鉢底穴があり、お皿も付いています。

基本の育て方
| 置き場所 | 特に風通しがよく、日当たりの良い場所。室内なら、いちばん明るい窓辺へ |
|---|---|
| 水やり | 土の表面がしっかりと乾いたら、株元の土に静かに、鉢底から流れ出るまでたっぷり。お皿の水は捨てる |
| 耐寒性 | 0℃(今回の株)。冬は霜や凍結に当てず、日当たりのよい室内へ |
| 根上がり | 埋め戻さない・水を勢いよく当てない・植え替えで高さを変えない |
品種ルッカそのものの話はルッカの回、針金での形づくりは針金かけの回もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. 根が出ていて、乾きすぎることはありませんか?
A. 地上に出た根は、時間とともに樹皮をまとって乾きに強くなっていきます。土の表面が乾いたらたっぷり与える、という基本の水やりを守っていれば大丈夫です。真夏に鉢ごと強い西日に当て続けるのは避けてください。
Q. 根上がりの根から芽が出てきたら、どうすればいいですか?
A. オリーブは幹や根元からも芽を出しやすい木です。樹形を崩したくない場合は、小さいうちに付け根から摘み取ってください。迷ったときは、写真を撮ってご相談いただければお答えします。
Q. 根上がりの株は、倒れやすくありませんか?
A. 根は鉢の中の土までしっかり下りているので、ふつうに置いて育てる分には心配ありません。今回の一鉢は重みのあるセメント鉢に植えてあるので、卓上でも据わりがよく安定します。
Q. 贈り物にしても大丈夫ですか?
A. はい。オリーブは古くから平和や豊かさの象徴とされ、新築祝いや開店祝い、退職祝いにも選ばれています。「この根っこは、わざと見せている仕立てなんです」とひとこと添えると、会話のきっかけにもなります。
GORI STORE TOKYOのオリーブ盆栽 ルッカ 小品(創樹・根上がり)
今回ご紹介した一鉢は、GORI STORE TOKYOのオンラインストアでご覧いただけます。香川・創樹が仕立てた、高さ約25cmのオリーブ盆栽ルッカ。雨だれ模様のセメント鉢(鉢底穴あり・お皿付き)入りで、同じものは二つとない一点物です。
▶ 創樹 オリーブ盆栽 ルッカ 小品(根上がり×彫り模様のセメント鉢)を見る
※一点物のため、売り切れの際はご容赦ください。植物は生きものですので、時間と共に変化いたします。
土の中に隠れているはずの根が、地上で脚を踏ん張っている。その姿には、どんな場所でも生きていこうとする木の強さがそのまま出ています。置く向きを変えるたびに、違う顔を見せてくれる一鉢です。
GORI