こんにちは、GORIです。
小さなオリーブ盆栽を眺めるとき、幹や根に目が行きがちですが、もうひとつ見てほしい場所があります。葉の「かたまり」と、その間の「空間」です。葉がただ茂っているのではなく、いくつかの層に分かれて、層と層の間から幹がのぞく。盆栽ではこの葉の層を「枝棚(えだだな)」と呼びます。
今日は、香川・創樹(そうじゅ)から届いたオリーブ「ルッカ」の小品盆栽――まっすぐ立つ太い幹の上に、枝葉が二段に分かれた一鉢――を例に、枝棚の見方と、葉のかたまりを空間で見せる剪定の考え方をお伝えします。
この記事の要点
- 枝棚とは、枝葉を棚のように層にまとめた部分。棚と棚の間の「空間」が、幹を見せ、木に奥行きを生む
- 幹の下から順に「一の枝・二の枝・三の枝」。いちばん下の枝が木の印象を決める
- オリーブは葉が向かい合って付く「対生」。枝先を切ると二本に分かれるので、棚が密になりやすい
- 混み合った枝は付け根から間引く「透かし剪定」で、光と風を棚の内側まで通す
- 強く切るのは新芽が動く前の2〜3月。春から初夏は伸びた枝先を軽く整える程度に

枝棚(えだだな)とは?
盆栽の枝葉は、自然に伸ばしっぱなしにすると、一つの大きな丸い塊になります。それを、枝ごとに葉のまとまりを水平に近い層へと整え、層の間に空間をつくったものが「枝棚」です。棚(たな)という字のとおり、葉が何段かの棚のように重なって見えます。
枝棚があると、何が変わるのでしょうか。まず、幹が見えます。葉に隠れていた幹の太さや樹皮の表情が、棚の間からのぞきます。次に、木に遠近感が出ます。手前の棚と奥の棚が重なり、手のひらサイズの木が、遠くから眺める大木のように見えてきます。そして、光と風が内側まで届きます。葉の塊の中が蒸れにくくなり、内側の小さな葉も元気に保てます。見た目のためだけでなく、木を健康に保つための形でもあるのです。
一の枝、二の枝――枝の数え方
盆栽では、幹のいちばん下から出ている主要な枝を「一の枝(いちのえだ)」、その上を「二の枝」「三の枝」と数えます。この一の枝が、木の印象をほぼ決めます。一の枝が低い位置にあれば、木はどっしりと落ち着いて見え、高い位置にあれば、すらりと背の高い印象になります。
今回の一鉢を見てみましょう。太い幹が根元からほぼまっすぐ立ち上がり、途中の低い位置から左へ一の枝、その上の高い位置から右へ二の枝が出て、それぞれが一つの棚をつくっています。二つの棚が左右に振り分けられているので、正面から見ると幹の立ち姿が隠れません。幹の太さに対して背が低いこの株は、低い一の枝のおかげで、小さいのに大木のような安定感があります。

オリーブの葉は「対生」。だから棚がつくりやすい
オリーブ(学名 Olea europaea、モクセイ科)の葉は、茎の同じ高さに二枚が向かい合って付く「対生(たいせい)」です。葉の付け根には芽があるので、枝先を切ると、その下の節から二本の新しい枝が左右に伸びてきます。一本が二本に、二本が四本に。切るたびに枝先が分かれ、葉のまとまりが密になっていく。これがオリーブで枝棚をつくりやすい理由です。
品種「ルッカ」は、イタリア・トスカーナ原産で、丸みのある小ぶりな葉と、枝のよく分かれる性質が持ち味。寒さや病気にも強く、小さな鉢でも樹冠がこんもりとまとまります。ルッカの品種としての特徴は、GORI図鑑「オリーブ ルッカとは?」に詳しく書きました。葉の裏が銀色に光る理由は、GORI図鑑「オリーブの葉はなぜ銀色に光る?」をどうぞ。

枝棚を保つ剪定:「透かす」と「切り戻す」
枝棚は、つくって終わりではありません。オリーブは成長が早く、放っておくと棚と棚の間の空間が葉で埋まってしまいます。覚えておきたいのは、二種類の切り方です。
- 透かし剪定:棚の中で混み合った枝、内側へ向かう枝、真上や真下へ伸びる枝を、付け根から間引きます。葉の量を減らして、光と風を内側まで通すのが目的です。棚の輪郭はそのままに、中を軽くするイメージです
- 切り戻し:棚から飛び出して長く伸びた枝先を、残したい長さの葉の付け根の上で切ります。切った下の節から二本に分かれて芽吹くので、棚の輪郭が整い、少しずつ密になります
時期の目安は、枝を大きく整える剪定は、新芽が動き出す前の2〜3月。春から初夏にかけては、伸びた枝先を軽く切り戻す程度にとどめます。秋以降に強く切ると、冬に向かって木の体力を落とすので避けてください。
もうひとつ、オリーブの花は前の年に伸びた枝に付きます。小さな盆栽で花や実を楽しみたい方は、前年枝をすべて切ってしまわず、棚の中に何本か残しておくと、春に小さな白い花が見られることがあります。
幹そのものを低く太くつくる「切り戻し」の考え方は、GORI図鑑「オリーブ盆栽の幹の切り口は欠点?」に、枝の向きを針金で整える方法はGORI図鑑「オリーブ盆栽の針金かけ」にまとめています。
枝棚の木を飾るときの正面
枝棚のある木は、棚が左右に分かれて見える面を正面にすると、幹の立ち姿と空間がいちばんよく見えます。今回の一鉢なら、低い棚が左、高い棚が右に広がる向きです。真正面から光が当たるより、窓からの光が横から差し込む場所に置くと、棚の重なりに影ができて、葉の銀色が際立ちます。
器は、チャコールグレーの地に縦の彫り模様が流れるセメント鉢。葉の緑と銀、幹のベージュ、器のグレー。色数を抑えた組み合わせだからこそ、棚と空間のリズムが目に入ってきます。

よくある質問
Q. 枝棚のない、丸く茂ったオリーブ盆栽は良くないのですか?
A. そんなことはありません。丸い樹冠を一つにまとめる仕立ても、オリーブらしい、やわらかな姿です。枝棚は「幹を見せたい」「木に奥行きを出したい」ときの整え方。どちらが正しいではなく、その木の幹や枝ぶりに合う形を選びます。
Q. 棚と棚の間に新しい芽が出てきました。切るべきですか?
A. 幹から直接出てくる芽(胴吹き)や、棚の間の空間へ伸びる芽は、空間を埋めてしまうので、小さいうちに指で摘み取るか、付け根から切ります。ただし、将来そこに新しい棚をつくりたい場合は、残して育てる選択もあります。
Q. 室内でも枝棚は保てますか?
A. 日当たりがよければ保てます。光が足りないと、枝が間延びして棚の輪郭が崩れやすくなるので、室内ではいちばん明るい窓辺に置き、暖かい季節はときどき屋外の光に当ててください。小さなオリーブ盆栽の室内での置き場所や水やりは、GORI図鑑「小さなオリーブ盆栽の育て方」にまとめています。
Q. 剪定した枝は捨てるしかないですか?
A. オリーブは挿し木で増やせる木です。春から初夏に切った枝を、清潔な用土に挿して明るい日陰で管理すると、発根することがあります。必ず付くわけではありませんが、剪定のついでに試してみる楽しみがあります。
この記事で紹介した一鉢
香川・創樹から届いた、オリーブ「ルッカ」の小品盆栽。根元からほぼまっすぐ立ち上がる太い幹と、左右に振り分けられた二段の枝棚。高さ約23cm・幅約15cm、チャコールグレーの彫り模様のセメント鉢(鉢底穴あり・お皿付き)に植えた、在庫1点の一点物です。
一点物|創樹 オリーブ盆栽 ルッカ 小品|まっすぐ立つ太い幹×二段の枝棚 彫り模様のセメント鉢(税込15,400円)
同じ創樹のオリーブ盆栽はオリーブの木の一覧からご覧いただけます。一鉢ごとに樹形が違うので、ぜひ見比べてみてください。
GORI