こんにちは、GORIです。
オリーブ盆栽を眺めていて、いちばん先に目が行くのはどこでしょう。葉の色、根元の太さ、器との相性。いろいろありますが、今日お話ししたいのは「幹の線」です。
香川県の生産者・創樹から届いたミッションのオリーブ盆栽は、幹が根元から大きく左へ振れ、途中でぐっと向きを変えて右上へ戻る、くの字の形をしています。「幹が曲がっているけれど大丈夫?」「どうやってこんな形になるの?」。お店でもよく聞かれるこの疑問に、今日はお答えします。
針金で枝を曲げる話は「オリーブ盆栽の針金かけとは?」に、幹の切り口の話は「オリーブ盆栽の幹の『切り口』は欠点?」に書きました。今日はその2つの先にある、幹の形そのものの見方のお話です。

盆栽の幹の形には、名前がある
盆栽の世界では、幹の立ち上がり方で樹形を呼び分けます。代表的なものを4つ。
- 直幹(ちょっかん):根元から先端まで、幹がまっすぐ立ち上がる形。堂々とした、静かな姿です。
- 模様木(もようぎ):幹が左右にゆるやかに曲がりながら立ち上がる形。自然の木にいちばん多く、盆栽でもいちばん親しまれている樹形です。
- 斜幹(しゃかん):幹が一方向へ傾いて立つ形。風に吹かれ続けた木のような動きがあります。
- 懸崖(けんがい):幹が鉢のふちより下へ垂れ下がる形。崖から身を乗り出した木を写したものです。
今回のミッションは、幹が左へ振れてから右へ戻る、模様木の仲間です。曲がりがゆるやかな模様木は多いのですが、この株はひと曲がりが大きく、「く」の字がはっきり見えるのが持ち味です。
曲がりはどうやってつくる?――2つの方法
オリーブの幹は、放っておけばおおむねまっすぐ上へ伸びます。曲がった幹は、人の手が時間をかけてつくったものです。方法は大きく2つ。
ひとつは針金かけ。若くてやわらかいうちに幹や枝に針金を巻き、曲げた形を木に覚えさせます。短い期間で曲線がつくれる反面、太くなった幹には効きません。
もうひとつは「切り戻し」で曲げる方法。幹を途中で切り、切り口の近くから別の方向へ出た枝を、次の幹として伸ばす。その枝が太ったら、また切って、また別の方向の枝を伸ばす。これを何年も繰り返すと、幹は切ったところで向きを変え、折れ曲がった線になります。英語ではクリップ・アンド・グロウ(切って、伸ばす)と呼ばれる方法です。

この株の幹をよく見ると、曲がり角の近くに丸い切り口がいくつも残っています。これが、切り戻しで曲がりをつくった証拠。幹の表面に浮いた小さな粒のような皮目も、この木が何年もかけて太ってきたことを教えてくれます。針金では出せない、ごつごつとした曲がりです。
「正面」はどこ?――曲がり幹の見方
盆栽には「正面」があります。木がいちばん良く見える向きのことで、生産者はこの正面を決めてから枝を整えていきます。
曲がり幹の正面は、幹の曲がりがいちばんはっきり見える向き。真横から見ると、くの字がくっきり浮かび上がります。逆に、曲がりの方向から見ると幹がまっすぐに見えてしまい、せっかくの動きが消えます。届いたら、鉢をゆっくり回して、幹の線がいちばんきれいに見える角度を探してみてください。
もうひとつの見どころは幹と樹冠の「流れ」。この株は、幹が右上へ折り返した先で、葉のかたまりも右へ右へと広がっています。幹の動きと葉の動きが同じ方向を向いているので、全体がひとつの流れに見える。これが、曲がり幹の盆栽が「生きて動いているように見える」理由です。
飾り方――流れの先に空間をあける
正面が決まったら、置き場所です。コツはひとつ、樹冠が流れていく方向に空間をあけること。右へ流れる木なら、右側を空けて置きます。壁や棚の端にぶつけると、流れが止まって窮屈に見えます。
- 棚の左端に置いて、右側を空ける
- 玄関の台で、壁を背にして置く(横から光が入ると幹の線が際立ちます)
- ショップのディスプレイなら、人が歩いてくる方向に樹冠を向ける
器も大事です。この株はマットな白い陶器鉢に入っています。白は幹の色も葉の銀色も邪魔せず、曲がりの線だけを浮かび上がらせてくれます。すり鉢のように上へ広がる形は、くの字の幹の重さを受け止めるのにちょうどいい。幹が左へ振れている分、鉢の存在感が右側の空間とつり合いを取っています。

根元から出た芽はどうする?
この株の根元近くからは、若い枝が一本、顔を出しています。オリーブは根元や幹の途中から新しい芽を出しやすい木で、これは元気な証拠です。
盆栽として幹の線を際立たせたいなら、根元で切り取ってかまいません。残しておけば、やがて新しい枝として育ちます。どちらでも木は困りません。「幹の線を見せたい」と思ったら切る、「にぎやかなほうが好き」なら残す。そのくらいの気持ちで決めてください。切るときは、清潔なハサミで付け根から。
曲がり幹のオリーブ、育て方で気をつけること
育て方の基本は、ほかのオリーブ盆栽と同じです。日当たりと風通しのよい場所に置き、土の表面がしっかり乾いたらたっぷり水やり。耐寒性は0℃なので、霜や凍結は避けます。
曲がり幹ならではの注意は2つ。
- 日の向きをときどき変える。樹冠が片側へ流れている木は、光が来る方向へさらに伸びようとします。ずっと同じ向きで置くと、流れが強くなりすぎたり、反対側の葉が減ったりします。1〜2週間に一度、鉢を少し回してあげてください。
- 伸びた枝は切り戻す。ミッションは枝が上へ伸びやすい品種です。樹冠から飛び出した枝を切り戻して、流れる形を保ちます。切るほど幹の線がきれいに見えるので、怖がらずに。
小さな鉢の水やりや冬越しは「小さなオリーブ盆栽の育て方」に、品種ミッションの話は「オリーブ『ミッション』とは?」にまとめています。

よくある質問
Q. 曲がった幹は、まっすぐに戻ってしまいますか?
A. 戻りません。切り戻しでつくった曲がりは、幹そのものが向きを変えて太っているので、形はそのまま残ります。新しく伸びる枝は上へ向かいますが、幹の線は変わりません。
Q. 自分でも曲がり幹をつくれますか?
A. つくれます。若い苗なら針金で、太い幹なら切り戻しで。ただし切り戻しは、切ってから次の枝が育つまで何年もかかります。今回の株のような形は、創樹が時間をかけて仕立てたもの。「育てながら、少しずつ自分の線を足していく」くらいの気持ちで楽しんでください。
Q. 幹が片側に傾いていて、倒れませんか?
A. 鉢に根がしっかり張っているので、普通に置いていて倒れることはありません。ただ、鉢を置く面が平らであること、強い風の当たる屋外に長く置かないことは気をつけてください。
Q. 切り口は塞いだほうがいいですか?
A. すでに乾いている切り口は、そのままで大丈夫です。時間とともに周りの樹皮が盛り上がって包んでいきます。ご自分で太い枝を切ったときは、切り口に癒合剤を塗っておくと安心です。
今日のまとめ
- 幹が左右に曲がりながら立ち上がる樹形を「模様木」と呼ぶ
- 曲がりは針金かけ、または切り戻し(切って、伸ばす)でつくる。幹に残る丸い切り口は、切り戻しの証拠
- 正面は、幹の曲がりがいちばんはっきり見える向き。樹冠が流れる方向に空間をあけて飾る
- 根元の芽は、切っても残してもよい。1〜2週間に一度は鉢を回し、伸びた枝は切り戻す
今回ご紹介した株は「創樹 オリーブ盆栽 ミッション|くの字に曲がる幹×白い陶器鉢」として、GORI STORE TOKYOのオンラインストアでご覧いただけます。一点物なので、同じ形はひとつだけ。ほかのオリーブはオリーブの木の一覧へどうぞ。
GORI