値上げできるのは、ファンがいるから──36万円のiPhoneと、アップルの供給網に差した陰り

値上げできるのは、ファンがいるから──36万円のiPhoneと、アップルの供給網に差した陰り

こんにちは、GORIです。

36万4800円。アップルが9月9日に発表した、折りたたみ型のiPhone「Duo(デュオ)」の日本での最低価格です。厚生労働省が公表している2025年のフルタイム勤務者の平均月収は34万600円。ひと月ぶんの給料を丸ごと出しても、まだ届かないスマホが登場したことになります。

しかも値上げはDuoだけではありません。報道によると、アップルは全機種で前モデルより値上げしました。

私は花屋です。スマホは作りません。けれどこの記事を読みながら、ずっと自分の店のことを考えていました。値上げの年を生きているのは、アップルも花屋も同じだからです。

36万円のスマホは、なぜ売れるのか?

まず数字を並べます。

  • 折りたたみ型「Duo」:最低価格36万4800円
  • 「iPhone 18 Pro」:21万9800円から。2025年発表の前モデルの発売時より4万円高い
  • Proの発売価格は、この5年で79%上昇

5年で79%。倍に近い上がり方です。それでも売れている。米調査会社IDCによると、2026年1〜3月期のアップルのスマホ出荷シェアは国内で55%、世界で約2割。どちらも同じ四半期としては2020年以降で最も高い水準です。市場予想では、2026年9月期の純利益は過去最高になる見通しとされています。

値段が上がっているのに、シェアも利益も上がっている。その理由を、記事ははっきり書いていました。固定客です。

前任CEOのティム・クック氏は、スマホの供給網を築き上げ、スマートウオッチなどの関連商品も含めた「囲い込み」でファンを増やしてきました。高機能とセキュリティーを重視するブランド戦略。一度その輪の中に入った人は、なかなか外に出ていかない。値上げを受け止めてくれる人たちが、15億人超の利用者の中に厚く存在しているということです。

過去最高益なのに、なぜ「陰り」と書かれたのか?

ここからが記事の本題でした。9月1日にCEOに就任したばかりのジョン・ターナス氏の船出は、環境の変化を告げている、と。

これまでアップルは、15億人超の利用者を背景にした圧倒的な購買力で、スマホの供給網の頂点に君臨してきました。半導体や電子部品を安く、たくさん仕入れる。だから高性能なスマホを出しながら、高い利益率を守ってこられた。

ところが、AIの普及で状況が変わりました。テック企業がAI向けにメモリー半導体を「爆買い」している。世界一の買い手だったはずのアップルが、別の業界の買い手に押され始めているのです。

海外メディアの報道では、アップルは複数のメモリー企業と長期契約を交渉していて、価格を犠牲にしてでも数量の確保を優先しているとされます。値段を決める側だった会社が、「高くてもいいから、確実に回してほしい」と頼む側に回りつつある。今回の値上げの背景には、こうした半導体メモリーなどのコストの膨張があります。

ソフトの面でも課題が残ります。音声機能「Siri(シリ)AI」では、競合のグーグルの技術を借りている。オープンAI、メタ、グーグルといった米テック大手はAI向けの新しい端末の開発に力を注いでいて、AI端末は音声が中心になり、画面が要らなくなるという見方まであるそうです。

画面が要らなくなったら、スマホで築いた囲い込みはどうなるのか。記事は、その影響力を維持できる保証はない、と締めくくっていました。

一番大きな買い手でも、買い負ける日が来る

この話、花屋にとってはまったく他人事ではありません。

そもそも花屋は、アップルのように仕入れ値を決められる立場にありません。市場に並ぶ花の値段は、そのときの需要と供給で決まります。そして自分より大きな需要が押し寄せたとき、花は簡単に持っていかれる

たとえば今年のお盆。菊などの定番の花が不足ぎみで、切り花の卸値は平年より2割ほど高い水準になりました(この話は「お盆の菊が足りない」の記事に書きました)。大きな需要期には、いつもと同じ値段では、いつもと同じ花が手に入らないのです。

世界一の買い手だったアップルでさえ、AIという巨大な需要の前では押されている。だとしたら、私たちのような小さな花屋が頼れるのは、買う力ではなく、つながりだと私は思っています。

実はアップルが選んだのも、同じ道でした。長期契約で、数量を確保する。 値段の交渉力ではなく、長い付き合いで供給を守る。花屋に置き換えれば、生産者さんと顔の見える関係を持ち続けることです。先日「香川県・創樹さんのオリーブを納品しました」という記事を書きましたが、ああいう一本は、市場でたまたま出会えるものではありません。生産者さんとつながっているから、お届けできるのです。

固定客は「財産」だが、「保険」ではない

もうひとつ、胸に刺さったのが記事の見出しにあった言葉です。「固定客頼み」

値上げを受け止めてくださるお客様がいるのは、商売をする者にとって最高の財産です。花屋も同じで、この数年、花の仕入れ値も、資材も、人件費も上がり続けています(人件費の話は「最低賃金が1280円に」の記事に書きました)。値上げをせずに踏ん張れる範囲には限りがある。そのとき「それでも、ここで買いたい」と言ってくださるお客様がいるかどうかで、店の運命は決まります。

ただ、アップルの記事は、その財産に甘えた瞬間の怖さも教えてくれました。固定客は、同じ形の商品が求められ続けるかぎり固定客です。スマホという形そのものが要らなくなれば、囲い込みの輪は意味を失うかもしれない。

では、花屋にとっての「画面が要らなくなる日」とは何か。私は、花を贈るという行為の形が変わる日だと考えています。ギフトの選び方も、届け方も、この数年で大きく変わりました。「いつもの花屋に電話で頼む」という形が、この先もずっと続く保証はどこにもありません。

だから、固定客に甘えない。値上げをお願いするなら、それ以上の理由を毎回お渡しする。 季節の花を切らさないこと。一株一株の物語を語れること。約束の日時に、約束の姿でお届けすること。「値段が上がっても、ここがいい」と言っていただける理由を、毎日積み上げる。 これしかありません。

私は、車も物も植物も、長く大切にする主義です。気に入ったものは、多少値段が上がっても使い続けます。お客様にとってのGORI STORE TOKYOも、そういう存在でありたい。そのためには、こちらが先に、お客様との関係を大切にし続けなければならないのだと思います。

よくある質問(FAQ)

Q. 2026年に発表された新しいiPhoneはいくらですか?
報道によると、折りたたみ型の「Duo(デュオ)」は日本での最低価格が36万4800円、「iPhone 18 Pro」は21万9800円からです。アップルは全機種で前モデルより値上げしており、Proは2025年発表の前モデルの発売時より4万円高くなりました。

Q. iPhoneの値上げはどれくらい続いていますか?
Proの発売価格はこの5年で79%上がったと報じられています。直近の値上げの背景には、AIの普及でテック企業がメモリー半導体を大量に買い集め、部品コストが膨らんでいることがあります。

Q. 値上げしてもアップルが売れているのはなぜですか?
高機能やセキュリティーを重視するブランド戦略と、スマートウオッチなど関連商品を含めた囲い込みで、固定客を増やしてきたためです。米IDCによると、2026年1〜3月期のアップルのスマホ出荷シェアは国内55%、世界で約2割と、同じ四半期として2020年以降で最も高い水準でした。

Q. アップルの「供給網支配の陰り」とは何ですか?
アップルは15億人超の利用者を背景にした購買力で部品を安く調達してきましたが、AIの普及でその優位が揺らいでいます。海外メディアの報道では、アップルは価格を犠牲にしてでも数量の確保を優先し、複数のメモリー企業と長期契約を交渉しているとされます。

値上げできるのは、ファンがいるから。けれど、ファンがいることは、未来の保証ではない。36万円のiPhoneは、その両方を一度に見せてくれました。

花屋にできることは、たぶんシンプルです。「値段が上がっても、ここがいい」と言っていただける理由を、今日も一つ積み上げること。

今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。

GORI

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