こんにちは、GORIです。
2026年9月3日、沖縄県が1086円と決めたことで、2026年度の最低賃金が47都道府県すべてで出そろいました。全国加重平均は1177円。いまの1121円から56円、率にして5.0%の引き上げです。国が7月に示した目安は55円でしたから、それをわずかに上回りました。東京都は1280円。10月1日から適用されます。
正直に書きます。私はこのニュースを、経営者としてかなり身構えて読みました。今年は花が高い。植木も高い。そこへ人件費です。三つそろって上がる年というのは、そう多くありません。
今年の引き上げは、どれくらいの規模なのか?
厚生労働省が9月3日に公表した集計を並べると、こうなります。
- 全国加重平均 1177円(+56円・+5.0%)
- 国が7月に示した目安は+55円(+4.9%)。決定はこれを上回った
- 25年度の+66円(過去最大)には届かず、伸び幅は縮んだ
- 最も高いのが東京都1280円、最も低いのが宮崎県1085円
- 各都道府県の上げ幅は54〜65円(25年度は63〜82円)
「去年より穏やかになった」という書き方もできます。ただ、雇う側の実感としては、穏やかと軽いは別の話です。5.0%は、どこまでいっても5.0%ですから。
東京と神奈川の差が、ついに1円になりました
私がこの発表でいちばん驚いたのは、平均の1177円でも東京の1280円でもありませんでした。東京1280円に対して、神奈川1279円。差が、1円です。
地域間の差は、はっきり縮んでいます。
- 最高額と最低額の差は195円(25年度の203円から縮小)
- 最高額に対する最低額の割合は84.8%で、12年連続の上昇
- 今年は引き上げ前の水準が低かった東北や九州・沖縄で伸びが大きかった
これは働く方にとっては、はっきり良い変化です。同時に、事業者にとっては前提の変更でもあります。「地方だから人件費が安い」という考え方が、もう通用しなくなってきている。私たちのように東京・神奈川・埼玉・千葉にまたがって仕事をしていると、これは実務でそのまま効いてきます。ちなみに埼玉は1196円、千葉は1195円で、どちらも10月1日からです。
いつから上がるのか?──今年は「10月」に戻りました
意外と見落とされがちなのが、発効日が県ごとに違うという点です。
最低賃金法は、金額決定の官報公示から30日後の発効を定めています。ただし30日を超えて日付を指定することもできる。25年度は引き上げ幅が大きかったぶん、企業側の準備期間を考慮して発効を遅らせる事例が相次ぎ、秋田や福島など6県では年をまたぎました。適用の先送りで恩恵が遅れることを問題視した厚生労働省は、2026年6月に「30日を超えて遅らせる場合は都道府県の審議会で理由を明示するよう求める」方針を示しています。
その結果、今年は37都道府県が通例どおりの10月発効に戻りました。最も遅いのが沖縄の12月2日です。
複数の県で商売をしている事業者にとっては、「10月1日に全部いっせいに」ではありません。県ごとに日付を確認して、給与計算のカレンダーに落とす。地味ですが、間違えると未払いになる話なので、ここは事務方と一緒に必ず潰しておきたいところです。
上げ幅最大は佐賀の65円。そこで何が起きていたのか
今年いちばん大きく上げたのは佐賀県の65円でした。国の目安56円に、9円を上乗せしています。
その佐賀では、審議会で労働者側と使用者側の主張が折り合わず、結論が出るまでに専門部会を7回開いたと報じられています。採決の際には、金額をさらに引き上げるべきだとして労働者側の委員1人が反対の意を示した。決定は九州で最も遅くなりました。
なぜここまでもめるのか。背景として指摘されているのが、地方の人手不足です。大都市に近い県では、賃金の高い隣の県へ労働力が流れてしまう。それが人材難をさらに加速させる。歯止めをかけるには最低賃金の引き上げが欠かせない——という事情があります。
ここは、花屋にとって他人事ではありません。花や植木を作っているのは、地方の産地の方々だからです。産地で人が採れなくなれば、作れる量が減る。人件費が上がれば、そのぶんが花の値段に乗る。産地の賃金の話は、そのまま私たちの仕入れの話なのです。今年の花の高騰、植木の高騰と、この記事は地続きだと私は思っています。
「全国平均1500円」は、いつ来るのか
もうひとつ、経営計画に関わる大事な変化があります。
高市早苗政権は、2026年7月に決めた骨太の方針で、最低賃金の全国平均1500円の達成時期を「遅くとも30年代前半のできる限り早期」に事実上後退させました。石破茂前政権が掲げていた「20年代に全国平均1500円」からの修正です。実際、今年度の議論では以前のような政治的な圧力はそれほどなく、大幅引き上げへの追い風は乏しかったと伝えられています。
では、ゆるやかになったから安心なのか。私はそう読みませんでした。
今年の上げ幅は5.0%です。仮にこのペースが続けば、東京の1280円は5年でおよそ1630円になります。目標時期が後ろにずれても、上がり続けるという前提そのものは何も変わっていない。むしろ「毎年上がるものとして予算を組む」という覚悟のほうが、経営者には必要だと感じています。
花屋として、私が決めていること
三つの高騰が重なった年に、私が自分の会社で決めていることを正直に書きます。
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「毎年上がる」を前提に、値段の作り方を変える。
一度だけの値上げでしのぐ発想をやめました。人件費が毎年5%上がるなら、それを毎年吸収できる価格の作り方に変えないと、いつか一気に上げることになります。お客様にとっても、そのほうがつらいはずです。 -
数字で見ておく。
人件費が売上の2割を占める商売なら、人件費が5%上がるのは売上の約1%にあたります。仕入れも5%上がるなら、そこにさらに2%前後。合わせて年3%強を、値段か生産性のどちらかで作らなければ利益は保てない。怖い数字ですが、見えていれば手は打てます。 -
「誰でも作れるもの」から静かに降りる。
人の時間が高くなる世の中で、手間のかかる商売が生き残る道は、その手間に価値が乗るものを売ることしかありません。どこでも買えるものを安く速く、という土俵では、私たちは勝てません。 -
人が高くなるのは、本当は追い風でもある。
花屋の仕事は、時間と手間のかたまりです。運ぶ人、水を替える人、束ねる人の時間が、そのまま商品に乗っている。その時間の価値が世の中で上がっていくというのは、見方を変えれば私たちの側にある話です。
この話の前編として、募集時の平均時給が1300円を超えたときに書いた記事もあります。あわせてどうぞ。
アルバイトの時給が1300円を超えた日──花屋の繁忙期は、誰と乗り切るのか
よくある質問(FAQ)
Q. 2026年度の最低賃金はいくらになりますか?
全国加重平均で1177円です。現在の1121円から56円(5.0%)の引き上げで、国が7月に示した目安の55円上げを上回りました。最も高いのは東京都の1280円、最も低いのは宮崎県の1085円です。
Q. 東京の最低賃金1280円はいつから適用されますか?
2026年10月1日からです。神奈川(1279円)、埼玉(1196円)、千葉(1195円)も同じく10月1日から。今年度は37都道府県が10月発効で、最も遅いのは沖縄県の12月2日です。発効日は県ごとに異なるため、複数県に事業所がある場合は個別の確認が必要です。
Q. 地域による最低賃金の差は縮まっているのですか?
縮まっています。最高額と最低額の差は195円で、25年度の203円から縮小しました。最高額に対する最低額の割合は84.8%と12年連続で上昇しています。今年度は東北や九州・沖縄など、もともと水準が低かった地域の伸びが大きくなりました。
Q. 最低賃金の引き上げは、花の値段にも影響しますか?
影響します。花や植木を生産しているのは地方の産地で、そこでも人手不足と賃金上昇が起きています。生産にかかる人件費は仕入価格に反映されますし、花屋側でも仕入れ・水揚げ・制作・配達のすべてに人の時間がかかります。2026年は花の相場高、植木の相場高、人件費上昇が同時に進んだ年になりました。
Q. 全国平均1500円にはいつ到達しますか?
政府は骨太の方針で、達成時期を「遅くとも2030年代前半のできる限り早期」としています。前政権の「2020年代に1500円」から事実上後退した形です。ただし2026年度の上げ幅は5.0%で、このペースが続けば東京の1280円は5年でおよそ1630円になる計算です。
花の高騰。植木の高騰。人件費の高騰。三つが同時に来た年でした。
守りに入る理由なら、いくらでも並べられます。でも私は、こういう年こそここからが勝負だと思っています。誰にとっても同じ条件なら、あとは何を売るかの勝負です。人の時間が高くなる世の中は、手間をかけて花と向き合ってきた私たちにとって、けっして不利な話ではないはずですから。
今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI