こんにちは、GORIです。
10月29日、ガソリン補助金を12月から毎月5円ずつ縮小するという方針を、首相が記者団に語りました。日本経済新聞がその日のうちに報じていて、私は「ついに来たか」と思いながら読みました。花屋にとってガソリンは、配達車の燃料というだけではありません。産地のハウスを暖める灯油、市場へ花を運ぶトラックの軽油、店の冷蔵ショーケースを回す電気。花は、燃料のかたまりです。だからこの話は、花の値段の話として読む必要があります。
何が決まったのか
記事で報じられた数字を整理します。
- 政府はこの3月から、レギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)を1リットル170円程度に抑えてきました。背景は中東情勢の悪化による原油高です。
- そのための補助金は、10月29日から11月4日の単価で1リットル52.4円。2022年に制度が始まってから最大の額です。
- 12月から、この170円という基準価格を毎月5円ずつ引き上げていきます。「春先に向けて、毎月5円ずつ引き上げていくことを基本に対応する」という首相の言葉が紹介されていました。
- 財政負担は足元で月3000億円ほど。10月30日の閣議で、補助金の原資になる基金に1兆円超を積み増すことも決めるそうです。
- 電気・ガス料金の補助も実施されます。12月から2027年2月までの3カ月で、標準的な家庭で計7000円程度の負担軽減。電気は2026年12月が1キロワット時あたり1円、2027年1月と2月が各4.5円です。3月は気候やエネルギー価格を見て判断するとのこと。
- 2027年4月からは消費税減税も予定されていて、「切れ目のない物価高対策を講じたい」という説明でした。
毎月5円は、春までにいくらになるのか
「5円」と聞くと小さく感じます。でも、毎月です。
単純に足し算すると、12月に5円、1月に10円、2月に15円、3月に20円。春先まで続けば、基準価格は170円から190円前後まで上がる計算になります。もちろん原油そのものが下がれば話は別ですが、補助という下駄を外していくことは決まった、と読むべきです。
花屋の配達で考えてみます。1日に40キロ走る配達車なら、燃費10キロで4リットル。5円上がれば1日20円、20円上がれば1日80円、月25日で2000円です。これだけなら、正直たいした額ではありません。
怖いのはそこではなく、花が店に届くまでの全部の段階で、同じことが起きることです。
- 産地のハウス。 冬の花はほぼ全部、暖めたハウスで咲いています。以前、灯油が1カ月で2割高くなり、チューリップ1本の光熱費が約8円になった話を書きました。今回の報道で触れられているのはガソリンですが、灯油や軽油、重油も、これまで同じ補助制度の対象になってきました。補助が縮む方向は、産地にも向かいます。
- 市場への輸送。 花は産地からトラックで市場へ運ばれ、市場から花屋へ運ばれます。軽油です。輸入の花は飛行機です。
- 店の電気。 切り花を保つ冷蔵ショーケース、観葉植物の育成ライト。家庭向けの7000円の補助は、店には来ません。
つまり、1本の花には、ハウスの灯油とトラックの軽油と配達のガソリンと店の電気が、全部乗っています。それぞれが数円ずつ上がる。そして、花の値段は市場の相場で決まるので、誰も自分でコストを乗せた値札を付けられない。しわ寄せは、いちばん上流の生産者さんに溜まります。
補助金がある前提で、商売を組まない
ここからが、私の答えです。
まず一つ目。補助金がある前提で商売を組まない。 補助は春先まで、と期限が切られました。「国民の皆様の貴重な税金だ」という首相の言葉のとおり、いつまでも続くものではありません。170円で回る仕組みではなく、190円でも回る仕組みに、今から直しておく。それが経営者の仕事だと思っています。
二つ目。配達を設計し直す。 燃料が高くなった時にいちばん効くのは、走る距離を減らすことです。お届け先が近い順にまとめて回る。曜日を決めて配達圏を分ける。遠方は配送料をきちんといただく。「無料配達」で燃料代を花の値段に溶かすより、配送料を正直に出して、花そのものの値段を守る。私はそう考えます。
三つ目。仕入れを「近く」と「旬」に寄せる。 旬の花は、暖房を焚かなくても咲きます。遠くから飛行機で来る花より、近い産地からトラックで来る花の方が、燃料が少なくて済みます。燃料が高い冬ほど、「今この季節に、この国で、無理なく咲く花」を主役にする。これは節約の話ではなく、花屋の腕の見せどころです。
四つ目。値段の理由を説明できる花屋でいる。 もし冬の花の値段が動いたら、「相場だから」ではなく「ハウスの灯油がこう上がった、補助がこう減った」と、ちゃんと話せる店でいたい。先日、ガーベラが4割高くなった話を書いたのも、同じ理由です。理由が分かれば、お客様は納得してくださる。私はそう信じています。
生産者さんと一緒に戦う
花屋だけが生き残っても、花が無ければ店は成り立ちません。だから私は、生産者さんと一緒に戦うつもりでいます。
- 「安いから買う」をやめる。 燃料をかけて咲かせた花に、きちんとした値段を払う。産地に続けてもらうための、いちばん確実な応援です。
- 産地の事情を、売り場で語る。 新潟のチューリップ農家さんが1本2円の値上がりを飲み込んでいること、今年つくるのをやめた農家さんがいること。花を手に取るお客様に、それを伝えるのは花屋にしかできません。
- 1本もムダにしない。 水揚げを丁寧にやり、売り場の温度を気にかけ、最後まで良い状態でお客様に渡す。産地が燃料を燃やして咲かせた花を、店の都合で枯らすわけにはいきません。
生産者さんが一度やめた品目は、翌年すぐには戻りません。球根の手配、ハウスの準備、何年もかけて磨いた技術。「補助が切れたから、やめた」が全国の産地で起きたら、春の店先から花が消えます。それだけは、絶対に避けたい。
よくある質問(FAQ)
Q. ガソリン補助金はいつから、どう減るのですか?
日本経済新聞によると、12月から、いまの基準価格170円程度を毎月5円ずつ引き上げていきます。春先に向けて段階的に縮小する方針で、首相が10月29日に表明しました。10月29日〜11月4日の補助単価は1リットル52.4円で、2022年の制度開始以来の最大額です。
Q. 電気・ガスの補助はどうなりますか?
2026年12月から2027年2月までの3カ月間、標準的な家庭で計7000円程度の負担軽減をめざすとのことです。電気は12月が1キロワット時あたり1円、1月と2月が各4.5円。3月については気候やエネルギー価格を見て検討するそうです。
Q. 花の値段にはどう影響しますか?
花は産地のハウス暖房(灯油・重油)、市場への輸送(軽油)、店の配達(ガソリン)、店の冷蔵設備(電気)と、燃料を何段階も通って届きます。燃料の補助が縮めば、それぞれの段階でコストが上がります。ただし花の値段は市場の相場で決まるため、すぐに店頭価格へ反映されるとは限らず、生産者がコストを吸収しきれずに生産をやめる形で、供給が減る影響が出る可能性があります。
Q. 花屋として、お客様にお願いしたいことはありますか?
旬の花を選んでいただくことです。その季節に無理なく咲く花は、暖房も輸送も少なくて済みます。そして、花の値段が動いた時は、その理由を店で聞いてください。私たちは必ずお答えします。
補助金は、いつか終わります。終わったあとに残るのは、産地と市場と花屋が、自分たちの足で立てる仕組みがあるかどうかです。毎月5円ずつ上がる現実を、私は言い訳にしません。配達を設計し直し、旬の花を主役にし、産地に恥じない値段で買う。その積み重ねで、来年の春も店先に花を並べます。
今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI