こんにちは、GORIです。
インドネシアが、日本へ送り出す労働者をいまの22万人余りから60万人に増やすと言い出しました。7月に来日したインドネシアのアフリアンシャー・ヌール労働副大臣が、日本経済新聞の取材に答えたものです。「ベトナムと並び、国別でトップを狙いたい」。数字にすると約3倍。私はこの記事を読んで、2年半前に自分が書いたことを思い出しました。「早めに着手しないと、海外の人材も来なくなる」。その通りの時代が、もう来ています。
インドネシアの人は、いま日本にどれだけいるのか?
まず現状を数字で並べます。
- 日本で暮らすインドネシア人は2025年末で26万6069人。国・地域別で6位。前年比33%増、10年前の7倍強です。
- 厚生労働省によると、2025年10月時点で22万人以上が技能実習や特定技能など、日本で働ける在留資格を持っています。有資格者は国・地域別で5位。主に製造業、建設業、医療・福祉の現場です。
- 出身国別の労働者数の推移を見ると、ベトナムが約60万人、中国が約43万人、そしてインドネシアが約22万人。インドネシアは2020年には5万人ほどでしたから、5年で4倍以上に増えた計算です。
ヌール副大臣の目標は「2030年までに22万人強から40万人へ、さらに60万人へ」。重点分野として挙げたのは、整備士などを含む自動車関連と、介護でした。
なぜ、自動車整備と介護なのか?
答えは単純で、日本でいちばん人が足りていない仕事だからです。
厚労省によると、2025年度の有効求人倍率は自動車整備士が5.46倍、介護員が2.96倍。全体の1.2倍を大きく上回ります。整備士は求人5件に対して求職者が1人しかいない。人が来ないのではなく、そもそも人がいない。だからインドネシア側も、そこを狙って人材を育てると言っているわけです。
一方で、送り出す側にも事情があります。インドネシアは人口2億8000万人の世界4位の人口大国ですが、製造業のような雇用吸収力のある産業を思うように育てられていない。若者の働く場所として、海外への労働者派遣に力を入れています。2025年の海外就労先は計29.7万人で、台湾30%、香港26%、マレーシア18%、そして日本は7%で4番目。まだ日本は「主戦場」ではないのです。ここを伸ばす余地がある、というのが副大臣の見立てです。
なぜ「日本語教育」がカギなのか?
私がこの記事でいちばん重く受け止めたのは、ここでした。
副大臣は「日本は専門人材を求めており、そのためにも日本語能力の向上が欠かせない」と言い、これまでインドネシア人材は他国の労働者に比べ、平均して日本語能力が劣っていたという認識まで示しました。自国の弱点をはっきり口にしたうえで、「日本語教育に力を入れる」と言い切ったのです。目標は、来日前に日本語能力試験(JLPT)のN3。「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。
背景には制度の変わり目があります。技能実習制度は2027年に「育成就労制度」に衣替えします。技能実習では介護職を除き要件になっていなかった日本語能力が、これからは求められる。育成就労では就労開始時に初級のN5合格が必要になります。副大臣が掲げたN3は、それより2段階上です。国として、要件の最低ラインではなく、その上を狙っている。
十分な日本語がないまま来日した人は、上司や同僚、役所とのやりとりが難しくなり、職場から失踪するといった事案も起きている、と記事は伝えています。言葉が通じないことは、本人にとっても、受け入れる会社にとっても、いちばんの事故のもとです。だからこそ日本語、という判断は、まっすぐで正しいと思います。
花屋の仕事は「言葉の仕事」でもある
さて、花屋の話です。
花屋は一見、手を動かす仕事に見えます。水揚げをして、束ねて、鉢を運んで、植える。けれど実際にやってみると、花屋は言葉の仕事なのです。
- 「この花、明日の朝までもちますか」というお客様の一言に、何と答えるか。
- 市場で仕入れた花を、店に着いてから「これは深水、これは浅水」と分ける指示。
- 造園の現場で「その枝は残して、こっちは詰めて」という、その場の判断。
- 開店祝いのスタンド花に書く、立て札の名前の確認。
どれも、言葉が半分でもずれると、そのまま商品の失敗になります。花に「やり直し」はありません。だから私たちが外国から来た仲間と働くなら、受け入れる側の言葉の準備が要る。相手にN3を求める前に、こちらが「やさしい日本語」で話せているか。写真つきの手順書があるか。名前で呼んでいるか。副大臣の「日本語教育に力」は、送り出す側の宿題であると同時に、受け入れる側の宿題でもあると私は受け取りました。
もう一つ。私たちが店に並べる花や植物は、そもそも産地の現場で、外国から来た人たちの手を借りて育っているものが少なくありません。花き農家でも技能実習や特定技能の方々が働いています。花屋の店頭に立つ人が日本人だけでも、その花を育てた手は、とっくに国境を越えている。これが、いまの花の流通の現実です。
「選ぶ側」から「選ばれる側」へ
記事の最後に、こう書いてありました。20年に中国に代わってトップの派遣国になったベトナムは、国内産業が育ってきたこともあり、日本への派遣が頭打ちになりつつある、と。
これは人ごとではない話です。国が豊かになれば、わざわざ海外で働く必要がなくなる。日本は、選ぶ側から選ばれる側に回っている。2024年1月に私は「外国人労働者 200万人 過去最多」という短い記事で「早めに着手しないと、海外の人材も来なくなる」と書きました。あれから2年半、その通りになっています。「外国人経営者の出国が3.9倍に」で書いたように、日本に来る外国人を巡る環境は、どんどん厳しく、そして選ばれにくくなっている。
ヌール副大臣は「インドネシア人はまじめで礼儀正しく、他国の労働者に比べても日本企業で勤めるための競争力がある」と胸を張っていました。私は、その言葉をそのまま返さないといけないと思っています。「日本の職場は、まじめで礼儀正しい人が、まじめに礼儀正しく働ける場所ですか」と。「最低賃金が1280円に」なった年に、賃金だけでなく、言葉と、働きやすさと、人としての扱い。そこを整えた会社に、人は来ます。国の内外を問わず、です。
インドネシアの植物が、店にある
最後に、少しだけ植物の話を。
GORI STORE TOKYOの店には、インドネシア原産の植物がいくつもあります。ボルネオ島やスマトラ島のジャングルに自生するウツボカズラ。ジャワ島をはじめ東南アジアの木陰で育つアグラオネマ。どちらも日本の家の中で元気に育ちます。「植物を通して世界を旅する」というのが私の店のコンセプトですが、植物だけでなく、人も来る時代になりました。インドネシアから来た人が店の前を通って、故郷の植物を見つけて足を止めてくれたら。そんな光景を、私は大好物と言わずにいられません。
よくある質問(FAQ)
Q. インドネシアは日本への労働者派遣をどれだけ増やす計画ですか?
2026年7月に来日したインドネシアのアフリアンシャー・ヌール労働副大臣は、日本で働ける在留資格を持つインドネシア人を、現在の22万人強から2030年までに40万人へ、さらに60万人まで増やす目標を示しました。国別トップのベトナムに並ぶ水準です。重点分野は整備士を含む自動車関連と介護です。
Q. 日本にいるインドネシア人は何人ですか?
2025年末時点で26万6069人で、国・地域別では6位です。前年比33%増、10年前の7倍強に増えています。厚生労働省によると、2025年10月時点で22万人以上が技能実習や特定技能など就労できる在留資格を持ち、有資格者は国・地域別で5位です。
Q. なぜ日本語教育が重視されているのですか?
技能実習制度が2027年に育成就労制度へ移行し、就労開始時に日本語能力試験(JLPT)のN5合格が求められるようになるためです。インドネシア政府はそれより2段階上のN3を来日前の目標に掲げています。日本語が不十分なまま来日すると、職場や公的機関とのコミュニケーションが難しくなり、失踪などの事案につながることも背景にあります。
Q. 人手不足はどのくらい深刻なのですか?
厚生労働省によると、2025年度の有効求人倍率は自動車整備士が5.46倍、介護員が2.96倍で、全体の1.2倍を大きく上回ります。
Q. インドネシア人の海外就労先で日本は何番目ですか?
2025年の海外就労者29.7万人のうち、台湾30%、香港26%、マレーシア18%に次いで日本は7%で4番目です。シンガポールが5%、その他が14%です(インドネシア在外労働者保護庁)。
Q. 花屋の仕事と外国人労働者はどう関係しますか?
花や植物は産地の農家で技能実習や特定技能の外国人が働いて育てられているものが少なくありません。また花屋の仕事は接客や現場の指示など言葉のやりとりが多く、外国から来た人と働くには受け入れる側にも「やさしい日本語」や写真つき手順書などの準備が必要だとGORIは考えています。
人が足りない、という話は、もう10年以上前から言われてきました。違うのは、これからは「来てもらえるかどうか」を日本が問われるということです。言葉を整え、働きやすさを整え、人を人として迎える。それができる会社に、国の内外から人は集まる。私はそういう店でありたいと、あらためて思いました。
今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI