花の市場が3年連続で縮小──冠婚葬祭が簡素になる時代に、花屋は「祝いの花束」で若い人に届けられるか

花の市場が3年連続で縮小──冠婚葬祭が簡素になる時代に、花屋は「祝いの花束」で若い人に届けられるか

こんにちは、GORIです。

花の市場が、3年連続で小さくなりました。日本花き卸売市場協会がまとめた2025年の花き取扱高は3299億円。コロナ禍の巣ごもり需要で観葉植物や鉢物が売れ、一時は持ち直したのですが、2023年からは元の縮小トレンドに戻っています。この3299億円という数字は、8月に「菊に希望を持つ理由」として書きました。今回の新聞記事には、その「なぜ減るのか」の中身がそろっていました。作る側が減り、気候が需要期を狂わせ、葬儀も結婚式も小さくなっている。三つの原因が同時に来ている。そして記事の最後には、それでも伸びている需要が一つ、はっきり書かれていました。プロポーズと成人式の花束です。厳しい数字と、伸びている数字。両方をお伝えします。

花の市場は、なぜ3年連続で縮小したのか?

日本経済新聞の記事から、数字を整理します。

  • 2025年の花き取扱高:3299億円(日本花き卸売市場協会)。2023年以降、3年連続の減少。
  • コロナ禍の一時回復:巣ごもり需要で観葉植物や鉢物の販売が増え、鉢物類の2021年の取扱高は2019年比で13%増。その後は従来の縮小トレンドに戻った。
  • 協会の福永哲也会長の言葉:「生産者が減り、作付面積が減少した。さらに気候変動により産地の生産力も弱まっている」。

記事が挙げる原因は三つです。生産者の高齢化による供給の縮小、冠婚葬祭の簡素化による需要の縮小、そして気候が不安定で需要期に合わせた生産が難しくなっていること。順番に見ていきます。

作る側で何が起きているのか?

まず供給です。農林水産省の数字が、はっきりしています。

  • 2025年産の切り花類の出荷量:26億6900万本、前年比6%減。
  • 切り花の作付面積:6%縮小。
  • 鉢物類の出荷量:1億5500万鉢、5%減。

出荷量が減った理由が「売れないから作らない」だけなら、まだ戻せます。しかし作付面積そのものが6%減っている。畑が減っている。これは生産者の引退が進んでいるということです。一度やめた花の畑は、簡単には戻りません。菊の記事で「再生産可能な価格」の話を書きましたが、価格が戻らないうちに、作る人が先にいなくなる。それがいちばん怖いシナリオです。

気候は、花の「需要期」をどう狂わせているのか?

ここが今回の記事で、私がいちばん唸ったところです。

花の需要のピークは、母の日がある5月、お盆の8月、彼岸の9月。生産者はその時期に合わせて作付けと出荷の計画を立ててきました。ところが近年は、夏前の急激な気温上昇で生育が乱れ、収穫や出荷を需要期に合わせることが難しくなっている。

具体的な数字が出ています。花き卸大手の大田花きによると、小ギクの動きはこうでした。

  • 2025年:仏花に使うキク類が、歴史的な猛暑で生育が進まず、出荷が遅れた。
  • 2026年:生産者はそれを踏まえて早めに作付けした。ところが「夏場の気温がそこまで上がらなかったため、そのまま出荷が早まった」(大田花きの担当者)。
  • 7月13日の週の小ギクの数量は前年同期比6割増。需要期の前に供給が増えたため、単価は前年同期比4割安の29円と値崩れ気味。
  • 8月3日の週(お盆向け需要の多い週)の数量は前年同期比2割減、単価は6%高。

つまり、去年は遅れ、今年は早すぎた。昨年の反省をそのまま今年に当てはめたら、今度は逆に転んだ。生産者を責める話ではありません。作付けを決めるのは何カ月も前で、その時点で夏の気温は誰にも分からないのですから。仲卸の大森花卉の担当者は「8月下旬時点で9月の彼岸向けの花もすでに入ってきている」と話しています。市場では、お盆前の小ギクと同じ値崩れが彼岸でも起きるのではないかと警戒されているそうです。

私たち花屋も市場から仕入れる側です。正直に言えば、小ギクが4割安い週は、仕入れ値だけ見れば助かります。しかし記事にあるとおり、需要期に合わせた計画的な生産が難しくなれば、花農家の意欲をそぎ、一段の生産減少につながりかねない。今年安く買えた花が、来年は畑ごと無くなっているかもしれない。安さを喜んでいる場合ではないと、私は思っています。

冠婚葬祭は、どこまで簡素になっているのか?

次に需要です。私の会社は、結婚式の花も、葬儀の花も扱っています。だからこの部分は、数字を読む前から実感がありました。

  • 葬儀や結婚式の小規模化が進み、生花販売大手・日比谷花壇の担当者は「ひとつの行事あたりに使う祭壇の花の量は減っている」と話す。コロナ禍以降は参列者を限定した葬儀形式も広がった。
  • 業務用だけでなく家で飾る日用品用途でも販売が減少。総務省の家計調査で、2025年の切り花の年間購入額は2人以上の世帯で7737円、5年前と比べて5%減。
  • 仏花の購入を支えてきた50〜70代が、物価高で買い控える傾向にある。
  • 市場の一時回復をけん引した鉢物の取扱額も、ここにきて伸び悩んでいる。

祭壇は、確かに小さくなりました。家族葬が当たり前になり、結婚式も少人数で気持ちのこもったものが増えています。ただ、私はこれを「花が要らなくなった」とは読んでいません。一つの行事あたりの「量」が減っているのであって、「その人を花で見送りたい」「二人の門出を花で祝いたい」という気持ちが減ったわけではない。量で稼ぐ商売が終わって、一輪一輪の意味で勝負する商売に変わった。私はそう受け止めています。仏花については「仏花はどこまで造花に置き換えられるのか」でも書きました。あの答えは今も変わりません。

それでも伸びている花の需要はどこにあるのか?

記事の後半に、光がありました。日比谷花壇が新しい需要開拓先として着目しているのが、20〜30代です。

  • 20〜30代の間では、SNS映えを意識して祝い事に花束を購入する層が増えている。とくにプロポーズ向けのバラの花束と成人式の日の需要が多い。
  • 日比谷花壇の日比谷公園本店は、バラの花束を主力商品として売り出し、2025年10月〜2026年7月の販売額は前年同期比3割増。30歳前後の若い消費者からの注文が増えている。
  • 成人式の日の需要も堅調で、日比谷花壇が運営する全店舗の1日あたりの売上額は、過去3年で5倍に伸びた。
  • 「切り花の消費の大部分を支えているのは50〜60代が多い。今後の消費を支える若年層にも積極的にアピールしていきたい」(日比谷花壇の担当者)。

SNS映え、大いに結構だと私は思います。写真に撮られる花束は、その瞬間に花屋の仕事が「記憶」に変わります。プロポーズのバラは、一生に一度、その人の人生に残る。成人式の日の花束は、写真の中で何十年も咲き続ける。花が一番輝くのは、人生の節目です。冠婚葬祭が簡素になっても、人生の節目そのものは無くなりません。祭壇の花が減った分を、節目の花束で取り返す。方向は、ここにあると思っています。

花屋は、この数字にどう向き合うか

私が受け取った3つの原則を書きます。

1. 「量」ではなく「意味」を売る。

祭壇が小さくなるのは止められません。それなら、小さな祭壇にその人らしい一輪を入れる。故人が好きだった花、二人が出会った季節の花。量で埋める提案をやめて、一本ごとの理由を添える。冠婚葬祭の花は、これからますますそういう仕事になります。

2. 祝いの花束は「撮られる前提」で作る。

若い人が花束を買う理由の一つが写真なら、写真に写ったときの美しさまで設計するのが花屋の仕事です。夜の照明で色がどう見えるか、片手で持ったときの重心、ラッピングのどこに店の名前が入るか。花束は渡した瞬間に終わりません。撮られてからが本番です。

3. 需要期の相場に振り回されない仕入れをする。

今年の小ギクのように、需要期の前に花が来る年が増えます。市場や産地から「今年は早い」「今年は遅い」の情報を早く取り、早く来た花は早く売り切る。値崩れした週に少し多めに買って店頭で見せることも、産地を支える花屋の仕事です。相場は毎年違います。だから毎年、産地と話すしかありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 2025年の花き市場の取扱高はいくらですか?
日本花き卸売市場協会によると2025年の花き取扱高は3299億円で、2023年以降3年連続の減少です。コロナ禍の巣ごもり需要で鉢物類の2021年の取扱高が2019年比13%増になるなど一時回復しましたが、その後は従来の縮小トレンドに戻っています。

Q. 花の市場が縮小している理由は何ですか?
記事が挙げる原因は三つです。生産者の高齢化による供給の縮小(2025年産の切り花出荷量は26億6900万本で前年比6%減、作付面積も6%減、鉢物は1億5500万鉢で5%減)、冠婚葬祭の簡素化による需要の縮小、そして気候が不安定で需要期に合わせた生産が難しくなっていることです。

Q. 気候変動は花の生産にどう影響していますか?
需要のピークである5月の母の日、8月のお盆、9月の彼岸に合わせて出荷する計画が立てにくくなっています。2025年は猛暑で小ギクの出荷が遅れ、2026年は早めに作付けしたところ夏の気温が上がらず出荷が早まりました。7月13日の週の小ギクは数量が前年同期比6割増、単価は4割安の29円と値崩れ気味でした。

Q. 冠婚葬祭の花はどれくらい減っていますか?
葬儀や結婚式の小規模化で、日比谷花壇によると「ひとつの行事あたりに使う祭壇の花の量は減っている」とのことです。家庭用も減っており、総務省の家計調査では2025年の切り花の年間購入額は2人以上の世帯で7737円と5年前より5%減りました。仏花を買ってきた50〜70代の買い控えも指摘されています。

Q. それでも伸びている花の需要はありますか?
20〜30代のSNS映えを意識した祝い事の花束です。日比谷花壇の日比谷公園本店ではバラの花束の販売額が2025年10月〜2026年7月に前年同期比3割増、成人式の日の全店の1日あたり売上額は過去3年で5倍に伸びました。プロポーズと成人式が中心です。

Q. 花屋はこの状況で何をすべきだとGORIは考えていますか?
祭壇の「量」ではなく一輪ごとの「意味」を売ること、祝いの花束を写真に撮られる前提で設計すること、産地や市場から早出し・遅出しの情報を取って需要期の相場に振り回されない仕入れをすること。この3点がGORIの受け止めです。

3299億円、3年連続の減少。数字は厳しい。それでも、プロポーズの花束が3割増え、成人式の日の売上が5倍になったという事実は、花を贈りたい気持ちは若い人の中にちゃんと生きていることを教えてくれています。市場が縮んでいるのではなく、花が求められる場面が変わっている。そこに合わせて店を変えていくのが、私の仕事です。

今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。

GORI

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