「奇跡の木」モリンガの種が、水道水のマイクロプラスチックを98%除去する──植物の力と、花屋が思う「植物と共に生きる」こと

「奇跡の木」モリンガの種が、水道水のマイクロプラスチックを98%除去する──植物の力と、花屋が思う「植物と共に生きる」こと

こんにちは、GORIです。

一粒の種が、約10リットルの水をきれいにする。そんな研究の話を、CNNの記事で読みました。主役はモリンガ(和名ワサビノキ)。「奇跡の木」と呼ばれ、葉も実も種も食べられる、栄養の塊のような木です。今年4月に発表された研究で、この木の種から取った成分が、水道水に混ざったマイクロプラスチックを98.5%取り除いたというのです。

私は花屋なので、植物の話になるとつい前のめりになります。けれど今日の話は、花や観葉植物の「見た目」の話ではありません。植物が、人の暮らしの土台そのものを支えているという話です。少し丁寧に書いてみます。

何が分かったのか──種の成分で、水道水のマイクロプラスチックを98.5%除去

記事が伝えていた研究の中身を整理します。発表したのはブラジルと英国の研究チームで、今年(2026年)4月に発表されました。

  • 対象:PVC(ポリ塩化ビニル)のマイクロプラスチック。飲み水に広く含まれ、特に有害とされる種類
  • 大きさ:平均18.8マイクロメートル。人の髪の毛の太さの約4分の1
  • 結果:モリンガの種の抽出物をろ過の仕組みに使うと、水道水から98.5%を除去
  • 比較:浄水場で広く使われる化学凝集剤「硫酸アルミニウム(ミョウバン)」とほぼ同じ効率。アルカリ性の高い水では、種のほうが上回った

仕組みは「凝集剤」です。水の中に漂う細かい粒を寄せ集めて大きな塊にし、ろ過で取りやすくする。モリンガの種には、その働きをする成分が含まれています。研究の共著者であるサンパウロの大学の教授は、モリンガが数千年前から水の浄化に使われ、古代ギリシャ、ローマ、エジプトで使われた証拠も残っていると話していました。

人類が何千年も前から知っていた木の力が、現代のいちばん新しい汚染にも効く。そこに、私はしびれました。

なぜ木の種がいいのか──再生可能で、土に還り、毒性の心配が少ない

ミョウバンではなく種を使う利点として、記事はこう挙げていました。再生可能であること、生分解性があること、大量の沈殿物を出さないこと、毒性の心配が少ないこと。ミョウバンは高い濃度では毒性があり、神経の病気との関連も指摘されているそうです。

木は、育てれば毎年種をつけます。使ったあとは土に還ります。化学薬品の工場も、輸送のコストもいらない。これは、植物を売る側の人間として、胸を張りたくなる話です。植物は、ただそこにあるだけで役に立つのではなく、人の手で育て、使い、また育てるという循環の中で、いちばん力を発揮する。私たちが鉢や植物の循環について書いた記事でも触れた考え方と、根っこは同じだと思います。

限界もある──種1粒で約10リットル、大都市の浄水場には向かない

ただし、記事は限界もきちんと伝えていました。

研究者によると、モリンガの種1粒で処理できる水は約10リットル。大量の水を扱う都市の大規模な処理施設には、とてつもない量の種が必要になります。研究チームは、この技術が活きるのは小さなコミュニティーや、化学凝集剤が手に入りにくい地域だろうと見ていました。種を増やすほど水に残る有機物も増えて、それを取り除く手間が生じる点も課題だそうです。この研究に関わっていない米国の薬学の専門家も、種の成分がどう分解されるか、捕まえたPVCがどうなるか、規模を広げてコストを下げられるかは、さらに研究が必要だと指摘していました。

花屋としては、この「限界」の書き方にも好感を持ちました。植物は万能ではありません。けれど、合う場所で、合う使い方をすれば、化学薬品に匹敵する仕事をする。それは、私たちが店で植物をお渡しするときに、いつも考えていることと同じです。日当たりと、水のやり方と、置く場所。合えば植物は驚くほど力を発揮しますし、合わなければ枯れます。

花屋が思う「植物と共に生きる」こと

GORI STORE TOKYOのテーマは「植物と共に生きる」です。私はこの言葉を、観葉植物を部屋に置いて癒やされる、という意味だけで使っているつもりはありません。

植物は、空気を作り、水を清め、食べ物になり、建物の材料になり、薬になる。人は昔から、植物にものすごく助けられて生きてきました。モリンガの話は、その長い付き合いの一つの断面です。古代エジプトの人が水をきれいにするのに使った木の種が、2026年のブラジルの研究室で、プラスチックの粒を捕まえている。

モリンガ自体は、インド北部のヒマラヤのふもとが原産とされる、暑さと乾きに強い木です。生長がとても早く、日本でも沖縄や九州などで栽培され、鉢植えや種も流通しています。寒さには弱いので東京の冬は室内に入れる必要がありますが、育てるのは難しくありません。葉を摘んでお茶にする方もいます。以前、ロボット研究者の「人間は特別ではない」という言葉から、植物と共に生きることを書きました。私たちの店の植物たちも、それぞれ世界のどこかから来た木です。元いた土地で、人の暮らしの何かを支えてきた。そのことを知ると、店先の鉢の見え方が変わります。

一粒の種が10リットルの水を清める。店先の小さな鉢の中にも、きっと同じくらいの力が眠っています。植物は、見た目だけで選ぶには、もったいない相手です。

よくある質問(FAQ)

Q. モリンガ(ワサビノキ)とはどんな植物ですか?
インド北部のヒマラヤのふもとが原産とされる落葉樹で、葉・花・実・種が食用になります。栄養が豊富なため「奇跡の木」と呼ばれ、暑さと乾燥に強く、生長が早いのが特徴です。日本では沖縄や九州などで栽培され、鉢植えやお茶の原料として流通しています。

Q. モリンガの種は、どのくらいマイクロプラスチックを取り除けるのですか?
CNNが伝えたブラジルと英国の研究チームの実験では、平均18.8マイクロメートルのPVCマイクロプラスチックを混ぜた水道水から、種の抽出物をろ過の仕組みに使うことで98.5%を除去できました。浄水に使われる硫酸アルミニウム(ミョウバン)とほぼ同じ効率です。

Q. 家庭でモリンガの種を使えば、水道水がきれいになりますか?
この研究は実験室での結果で、研究者自身も実用化にはさらなる研究が必要としています。記事でも家庭用の浄水方法としては紹介されていません。種1粒で処理できるのは約10リットルほどで、種を増やすと水に残る有機物も増えるという課題があります。

Q. モリンガは東京の家でも育てられますか?
寒さに弱いので、冬は室内の明るい場所で管理する必要がありますが、春から秋はよく育ちます。日当たりと水はけのよい土を好み、生長が早いので剪定して大きさを保つのがコツです。

植物は、飾るだけのものではない。水を清め、空気を作り、人の暮らしを何千年も支えてきた。そのことを、今日はモリンガの種に教えてもらいました。GORI STORE TOKYOの店先に並ぶ植物たちも、それぞれの土地で、そうやって人と生きてきた木たちです。

今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。

GORI

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