こんにちは、GORIです。
山形県の出羽三山、羽黒山に行ってまいりました。山頂で私の足が止まったのが、この「世界平和之塔」。地球を模した石の球の上で、一羽のカラスが翼をいっぱいに広げています。この鳥こそ、今日の主役・八咫烏(やたがらす)。神武天皇を大和へ導いたと伝わる、日本神話の「導きの神」です。その信仰は1400年以上、今もまったく色あせていません。

羽黒山の山頂で出会った世界平和之塔。地球の上に立つ八咫烏に、世界を平和へ導いてほしいという願いが込められています。
八咫烏とは何者なのか?
八咫烏が初めて登場するのは、今から約1300年前に編まれた「古事記」と「日本書紀」です。舞台は神武東征。初代・神武天皇の一行が熊野の険しい山中で道を見失ったとき、天から遣わされたのが八咫烏でした。八咫烏は一行の先頭に立って飛び、大和の橿原まで導き切った。この働きから、八咫烏は「導きの神」として祀られるようになりました。
名前の「咫(あた)」は長さの単位で、約18cm。八咫なら約144cmですが、実際は数字そのものより「とにかく大きい」という意味だと考えられています。つまり八咫烏とは「大いなるカラス」なのです。
なぜ三本足なのか?
面白いのはここからです。実は古事記にも日本書紀にも、八咫烏が三本足だとは一言も書かれていません。三本足の姿が広まったのは平安時代以降とされ、太陽の中に三本足のカラスが棲むという中国の伝説「三足烏(さんそくう)」と結びついたと考えられています。三本の足は「天・地・人」を表すという説もあります。太陽の使いであり、天と地と人をつなぐ存在。カラスと聞いて思い浮かべる姿とは、まるでスケールが違います。
羽黒山と八咫烏の1400年の縁
そして今回私が訪れた羽黒山。ここは八咫烏との縁が特別に深い山です。今から約1400年前の593年、崇峻天皇の御子・蜂子皇子(はちこのおうじ)が難を逃れて北へ渡り、三本足の霊烏に導かれてこの山に登ったと伝わります。皇子はここで修行の末に羽黒の神を感得し、羽黒山・月山・湯殿山の出羽三山を開きました。「羽黒」という山の名は、導いたカラスの羽の黒さに由来するといわれています。

参道に立つ木製の灯籠。日本遺産「出羽三山」の案内板の上で、障子にカラスのシルエットが舞います。

近づいてよく見てください。足が三本。羽黒山は今も、八咫烏が導く山なのです。
参道は「生きた植物の博物館」でした
植物屋として言わせてください。羽黒山の参道は、植物好きにとって大好物の連続です。全長約1.7km、2,446段の石段の両側に、樹齢数百年の杉並木がどこまでも続きます。

石畳の参道。杉の巨木の間の奥に、国宝の五重塔が見えてきます。
杉並木の中に立つのが、国宝・羽黒山五重塔。高さ29m、東北最古の塔です。平将門の創建と伝えられ、今の塔は約600年前、1372年に大修復されたという記録が残ります。釘を使わない素木造りの塔が、杉の森の中に静かに立つ姿。鳥肌が立ちました。

見上げた瞬間、言葉を失いました。650年、この森で立ち続けている木の建築です。

そして五重塔のそばには、樹齢1000年を超える天然記念物「爺杉(じじすぎ)」。幹の周囲は約10m。1000年間、一歩も動かずにこの参道を見守ってきた大先輩です。私はこういう「長く生きる植物」の前に立つと、いつも背筋が伸びます。植物と共に生きるとは、こういう時間の流れと共に生きることなのだと思うのです。
現代も日本を導く八咫烏
八咫烏は神話の中だけの存在ではありません。サッカー日本代表のエンブレムに描かれているのも八咫烏です。採用は1931年。「ボールをゴールへ導くように」という願いが込められています。道に迷った一行を導いた神話の霊鳥が、今は日本中の声援を背負ってピッチの上にいる。1300年前の物語が現役で生きているのですから、たまりません。
よくある質問
Q. 八咫烏とはどんな神様ですか?
A. 古事記・日本書紀に登場する霊鳥で、神武天皇の一行を熊野から大和へ導いたと伝わります。この故事から「導きの神」として、進むべき道を照らす神様として信仰されています。
Q. 八咫烏はなぜ三本足なのですか?
A. 実は古事記・日本書紀には三本足の記述はありません。平安時代以降、太陽に棲む三本足のカラス「三足烏」の伝説と結びついて広まったとされ、三本の足は「天・地・人」を表すという説があります。
Q. 羽黒山と八咫烏の関係は?
A. 約1400年前、蜂子皇子が三本足の霊烏に導かれて羽黒山を開いたと伝わります。山名の「羽黒」は、その霊烏の羽の黒さに由来するといわれ、参道の灯籠などいたるところに八咫烏の意匠が息づいています。
導きの神・八咫烏。私も植物の世界で、お客様を最高の一鉢へ導く存在でありたい。そう誓った羽黒山参りでした。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
GORI