こんにちは、GORIです。
私たちのような中小企業にとって、いちばん身近な金融機関は信用金庫です。その信用金庫が、いま苦しい。日本経済新聞(2026年8月)の報道によると、2026年3月期に最終赤字となった信用金庫は全国で17。前の期はわずか5信金でしたから、一年で3倍以上に増えたことになります。全国254信金の開示資料を集計したところ、約半数が減益、純利益の合計は2424億円で前の期から16%減。同じ時期、上場する地方銀行は大手がけん引して2期連続の最高益ですから、はっきりと明暗が分かれました。花屋の話ではありませんが、これは私たち中小企業の経営に直結する話です。順を追ってお話しします。
なぜ金利が上がると、信用金庫が赤字になるの?
「金利が上がれば銀行は儲かる」——ふつうはそう考えます。実際、地方銀行は最高益でした。ではなぜ信金は逆に赤字なのか。理由は、信金がためこんできた「債券」にあります。
長いあいだ、日本は超低金利の時代でした。お金を貸しても、ほとんど利息が取れない。しかも地方では人口が減り、お金を借りたい会社そのものが減っていきます。貸したくても、貸す先が伸びない。そこで多くの信用金庫は、国債や地方債を買って運用することを、稼ぎの主力に据えてきました。
ここで、金利と債券の関係を押さえておきます。金利が上がると、すでに持っている債券の価値は下がります。
たとえば、利息が年1%の債券を持っているとします。ところが世の中の金利が上がって、新しく出る債券は年3%の利息がつくようになった。すると、あなたの1%の債券を欲しがる人はいません。売ろうとすれば、値引きするしかない。これが「債券の価値が下がる」ということです。
日本が「金利ある世界」へ転換したことで、信金が積み上げてきた債券の価値が、いっせいに下がりました。日銀によれば、信金の債券関係の損益は4248億円の損失で、前の期の約2.7倍。含み損(売らずに抱えたままの損)は、株式を含めて2026年3月末で約2兄6000億円、前の期から7%増えています。含み損を抱えている信金は237、全体の9割超。そのうち205信金は、前年より含み損が膨らんでいます。
赤字の中身も報じられています。兵庫県北部を地盤とする但馬信用金庫が13年ぶりの赤字で195億円、愛媛県松山市の愛媛信用金庫は1951年の設立以来初めての赤字で189億円。長い歴史のなかで初、という言葉の重さが伝わってきます。
「損を出してでも売る」ほうが、実は前向き?
ここが、経営者として非常に考えさせられたところです。
赤字を出した信金の多くは、あえて損を確定させて債券を売ったとみられます。但馬信金はこれを、将来にわたって財務の健全性を高めるための経営判断だと説明しています。損切りです。古い低金利の債券を切り離してしまえば、そのお金をいまの高い利回りで運用し直せる。融資も国債も利回りは改善しているので、痛みを一度引き受ければ、翌年からの収益力は上がります。
つまり、赤字を出した信金が弱い信金だとは限りません。むしろ、体力があるから損を確定できたという側面があります。
怖いのは逆のほうです。財務基盤が弱い信金は、損切りに踏み切れません。債券は満期まで持ち続ければ損は出ませんが、そのあいだ含み損は経営を圧迫し続けます。そして——ここが重要なのですが——有価証券の含み損が純資産を上回ると、銀行法に基づく「早期是正措置」の対象になりえます。1年以内に財務が改善しなければ、金融庁が業務停止命令を出す仕組みです。
業界の中央機関である信金中央金庫も支援に動いています。2025年には栃木信用金庫へ40億円、2026年には稚内信用金庫へ200億円の資本支援を実施する予定と報じられています。
では、花屋のような中小企業には何が起きるのか?
ここからが、私たちの話です。
信用金庫は、地域の中小・零細企業にお金を貸すための金融機関です。その信金が、含み損を抱え、体力を削られている。貸す余力が細れば、まっさきに影響を受けるのは、私たちのような小さな会社です。
具体的には、こういうことが起こりえます。
- 融資の審査が慎重になる。 貸し出せる総量に余裕がなくなれば、当然の流れです。
- 金利の条件が厳しくなる。 そもそも世の中の金利が上がっているので、借入コストは上がる方向です。
- 設備投資の判断が遅れる。 店舗改装、車両更新、システム導入——資金調達が読めないと、投資の決断も鈍ります。
しかも信金は、預金集めでも苦戦しています。預金額の伸びは近年おおむね止まっていて、預金を増やしている国内銀行と差がついている。かといって預金金利を引き上げれば、今度は利ざやが縮んでしまう。このジレンマは、そのまま貸出の余力に響きます。
私たち中小企業は、いま何をすべきか
暗い話ばかりしても仕方がありません。この記事を読んで、私が自分に言い聞かせたことを4つ書きます。
- 借りられるうちに、借りる算段をしておく。 資金は、必要になってから探すと足元を見られます。設備投資の予定があるなら、条件が悪くなる前に相談を始めるべきです。
- 取引金融機関を一本に絞らない。 一つの信金の体力に、自社の資金繰りを預けきってしまうのは危うい。複数行との関係を、平時から丁寧に育てておく。
- 決算書の説明を、自分の言葉でできるようにする。 審査が慎重になる局面ほど、数字を語れる経営者かどうかが効いてきます。これは日々の積み重ねでしか身につきません。
- 金利上昇を前提に、事業の採算を組み直す。 借入コストが上がる前提で、利益率をどう作るか。ここから逃げると、あとで必ず苦しくなります。
そしてもうひとつ、忘れたくないことがあります。信用金庫は、私たちのような会社が育つのを、ずっと支えてきてくれた存在だということです。銀行が相手にしてくれなかった時代の小さな商店に、お金を貸してきたのが信金でした。いま彼らが苦しんでいるのは、地域を支え続けてきた結果でもあります。
苦しいときほど、日ごろの付き合いが物を言う。花屋の商売でも、金融機関との付き合いでも、それは同じだと私は思っています。
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ2026年3月期に信用金庫の赤字が急増したのですか?
金利上昇によって保有していた国債・地方債の価値が下がり、売却損や含み損が膨らんだためです。全国で17信金が最終赤字となり、前の期の5信金から急増しました。日銀によれば信金の債券関係損益は4248億円の損失で、前の期の約2.7倍でした。
Q. 地方銀行は最高益なのに、なぜ信用金庫だけ苦しいのですか?
地方では人口減少で貸出金が伸び悩み、長年の超低金利のもとで有価証券運用を稼ぎの主力に据えてきた信金が少なくないためです。「金利ある世界」への転換で、その債券の価値が下落しました。上場地方銀行は大手がけん引して2期連続の最高益となり、明暗が分かれています。
Q. 赤字になった信用金庫は危ないのですか?
必ずしもそうとは言えません。赤字覚悟で債券を売るのは、損を確定させて将来の収益力を高める経営判断とされています。むしろ財務基盤が弱く売却に踏み切れない信金のほうが、含み損に経営を圧迫され続けます。有価証券の含み損が純資産を上回ると銀行法に基づく「早期是正措置」の対象となりえます。
Q. 中小企業の資金調達にどんな影響がありますか?
信金の融資余力が乏しくなれば、地域企業の資金調達には逆風となります。審査の慎重化、借入条件の厳格化などが考えられます。設備投資の予定がある場合は、早めに取引金融機関へ相談し、複数の金融機関との関係を平時から築いておくことが備えになります。
数字の裏には、必ず誰かの経営判断があります。今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI