こんにちは、GORIです。
2025年10月、アルバイト・パートの募集時平均時給が、三大都市圏(首都圏・東海・関西)で1302円となりました。前年同月から51円(4.1%)高く、集計方法をさかのぼれる範囲では初めての1300円台。リクルートグループが2025年11月17日に発表した数字です。あれから月日は流れましたが、この「1300円の壁を超えた」という出来事は、私たち中小の事業者にとって、いまも折に触れて思い返すべき節目だと思っています。花を売るという仕事は、機械では代われません。人がいなければ、店は開きません。だからこの数字を、経営者としてまっすぐ見ておきたいのです。
1302円という数字は、どう作られたのか?
この時給は、リクルートグループの採用管理システム「Airワーク 採用管理」経由の求人情報などをもとに算出されたものです。2024年4月以降のデータに加え、それ以前の「タウンワーク」などの集計も含めて、1300円台は初めてでした。
内訳を見ると、上がり方に特徴があります。
- 販売・サービス系:66円(5.4%)高の1290円。全職種でプラス。
- 首都圏:47円(3.6%)高の1339円。三大都市圏すべてで上昇。
- 関西の販売・サービス系:117円(9.9%)高の1302円と、伸びがとりわけ目立ちました。
押し上げた要因は、大きく二つです。ひとつは最低賃金の引き上げ。東京都は2025年10月から最低賃金を63円(5.4%)引き上げて1226円とし、各地で見直しが始まりました。もうひとつは年末の繁忙期に向けた採用の活発化です。販売、イベント、食品製造、配送。年末に向けて人手が要る仕事が一斉に募集を始めます。
そして、じわりと効いてくるのが連鎖です。最低賃金の水準で募集していたコンビニなどの時給が上がると、人材確保で競合する近隣の店も、時給を見直さざるをえなくなる。記事では、都内の飲食店などの一般的なアルバイトで1600〜1700円程度の時給も珍しくないと伝えられています。1226円という最低賃金の数字と、実際の募集時給1600円台。この開きこそが、いまの現場の実感に近いのではないでしょうか。
ほかの調査は、どんな数字を出していたのか?
同じ時期の数字を、複数社の調査で並べてみると立体的になります。
- ディップ:2025年10月の全国平均時給は1360円、前年同月比45円(3.4%)上昇。繁忙期を中心にスポットワーク(単発の仕事)が広がる一方、キャンセルを巡るトラブルや採用経費の負担が膨らみがちなことから、「一部の求人がアルバイトに回帰している」(井上剛恒常務執行役員)とされていました。同社の求人件数は前年同月を16.7%上回っていました。
- エン:2025年10月の全国のアルバイト平均時給は1301円、前年同月比48円(3.9%)高。三大都市圏では1329円と前年同月を下回ったものの、人手不足感を背景に高い水準を保っていました。
調査によって数字に幅はありますが、方向はひとつです。上がっている。そして、その理由は景気が良いからというより、人が足りないからです。
「年収の壁」と、花屋の繁忙期
もうひとつ、雇う側として毎年悩まされるのが「年収の壁」です。税や社会保険の負担で手取りが減る境目を意識して、年末になると働き手が就業を手控えるケースが目立ってきます。いちばん人手が欲しい時期に、いちばんシフトが埋まらない。これは花屋も例外ではありません。
花屋の繁忙期は、はっきりしています。母の日、お盆、年末年始、そしてクリスマス。この時期は、いつもの人数では回りません。作業場に人を増やし、配達を増やし、店頭を厚くする。そのための人手を、時給が上がり続ける市場のなかで確保しなければならない。しかも、私たちが売っているのは花です。扱いに慣れた人でなければ、任せられない仕事がたくさんあります。単発で来てくれた方に、いきなり花束を組んでもらうわけにはいきません。
ここに、花屋の人手問題の本質があると私は思っています。時給を上げれば人は来る。でも、上げただけでは「戦力」にはならない。
では、花屋はどう構えるべきか
私が自分の会社で意識していることを、正直に書きます。
- 繁忙期の人手は、繁忙期に探さない。 母の日の人を4月に探しても遅い。閑散期にこそ、来年の人に来てもらう。花に触れる時間を積んでもらうことが、いちばん効く人材投資です。
- 「誰でもできる仕事」と「慣れが要る仕事」を分ける。 袋詰め、水揚げの下準備、配達の同行——切り出せる仕事は必ずあります。そこを単発の方に任せられる形に整理しておけば、経験者は花の仕事に集中できます。
- 時給だけで勝負しない。 コンビニと同じ土俵で時給を競っても、体力勝負では勝てません。花に囲まれて働ける、季節を体で感じられる、技術が身につく——花屋にしかない魅力を、募集の文面できちんと語る。私はここに勝機があると思っています。
- 人件費の上昇を、価格に反映する覚悟を持つ。 花の値段は、産地の事情だけで決まるものではありません。運ぶ人、水を替える人、花束を組む人の時間が乗っています。人件費が上がるなら、それを説明できる商品と価値を作るのが経営者の仕事です。
時給1300円という数字を、コストとしてだけ見ると気が重くなります。けれど見方を変えれば、人の時間の価値がきちんと認められはじめたということでもあります。花屋の仕事は、時間と手間のかたまりです。その価値が上がっていく世の中は、本当は私たちの側にある話なのかもしれない——そう考えるようにしています。
よくある質問(FAQ)
Q. アルバイトの平均時給はいくらですか?
リクルートグループの集計では、2025年10月の三大都市圏(首都圏・東海・関西)の募集時平均時給は1302円で、前年同月比51円(4.1%)高となり、初めて1300円台に乗りました。同時期の調査では、ディップが全国平均1360円、エンが全国平均1301円としています。※いずれも2025年10月時点の数字です。
Q. なぜアルバイトの時給が上がっているのですか?
最低賃金の引き上げと、年末繁忙期に向けた採用の活発化が主な要因です。東京都は2025年10月から最低賃金を63円(5.4%)引き上げて1226円としました。最低賃金水準で募集していた店の時給が上がると、人材確保で競合する近隣店も時給の見直しを迫られ、連鎖的に相場が上がっていきます。
Q. 「年収の壁」とは何ですか?
税や社会保険の負担によって手取りが減る収入の境目のことです。年末になると、この壁を意識して就業を手控える働き手が目立ってきます。人手が最も必要な繁忙期にシフトが埋まりにくくなる、雇う側にとって悩ましい問題です。
Q. 花屋の人手不足は、時給を上げれば解決しますか?
時給の引き上げは必要条件ですが、それだけでは足りません。花の水揚げや花束の制作には慣れが要り、単発の人材にすぐ任せられる仕事ばかりではないからです。閑散期から人を育てること、切り出せる作業を整理しておくこと、花屋ならではの働く魅力を伝えることが、あわせて必要になります。
人の時間の価値が上がる世の中は、手間をかける商売にとって悪い話ばかりではないはずです。今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI