こんにちは、GORIです。
日本で会社や飲食店を経営してきた外国人の方々が、静かに日本を離れ始めています。日本経済新聞(2026年9月)の報道によると、2026年上半期に再入国の手続きをせずに離日した「経営・管理」の在留資格を持つ外国人は953人。前年同期の3.9倍です。2025年秋までは月に数十人だったものが、同年12月に114人となり、2026年は月100〜200人台で推移している。はっきりとした変化です。私も複数の会社を経営する身として、この数字を他人事とは思えませんでした。順を追ってお話しします。
何が変わったのか?──資本金500万円から3000万円へ
出入国在留管理庁は2025年10月に省令を改正し、在留資格「経営・管理」の取得要件を大幅に厳格化しました。報じられている主な中身はこうです。
- 法人の資本金要件を500万円から3000万円に引き上げ
- 3年以上の経営・管理経験、または修士以上の学位
- 常勤職員の雇用
- 一定の日本語能力
資本金3000万円。この数字の重さは、経営者なら肌で分かると思います。東京商工リサーチの調査では、2024年に国内で設立された法人14万3367社のうち、資本金3000万円以上はわずか1491社、全体の1%です。日本人が作る会社でも99%が届かない水準を、新たな基準にしたということです。
効果は劇的でした。入管庁によれば、厳格化以降5カ月間の申請件数は、直前の5カ月間と比べて約96%減。蛇口は、ほぼ閉まりました。
なぜ厳格化されたのか?
背景には、「経営・管理」の在留者数の急増があります。2025年末時点で4万6781人と、5年前の1.7倍。制度の趣旨に合わない形での資格取得が問題視されてきたことも事実で、在留管理を適正化すること自体には理由があります。経営の実態がない「ペーパー経営者」を排除するのは、まっとうに商売をしている経営者にとってもプラスの面があります。
一方で、入管庁は2028年10月までは新基準を満たさなくても在留期間の更新を認め、それ以降も基準を満たす見通しが立てば許可する可能性があると説明しています。つまり既存の経営者に対しては一定の猶予がある。それでも出国が3.9倍に増えているのは、新基準とは別に、経営実態などの審査そのものが従来より厳しくなったという声があるからだと報じられています。数字だけでなく、空気が変わったのです。
花屋から見える、街への波及
ここからは、花屋としての実感の話です。
私たちの商売にとって、飲食店は大切なお客様です。新しいお店がオープンすれば、開店祝いのスタンド花や胡蝶蘭が届き、店内には観葉植物が入る。毎週の生け込みで花を飾ってくださるお店もあります。開店祝いの花は、街に新しい商売が生まれた数だけ動く。逆に言えば、廃業が増えれば、その分の花は動きません。
東京商工リサーチは、小規模企業が新基準を満たすのは難しく、外国人経営者が廃業すれば、影響は原材料の卸元や事業用不動産を貸していた日本企業にも及ぶと指摘しています。飲食店が一軒閉まれば、食材の卸、酒屋、おしぼり屋、内装屋、不動産オーナー、そして花屋まで、ぶら下がっていた商売がまとめて取引先を失う。一軒の廃業は、一軒では済まないのです。
東京で店をやっていると、外国人の経営する飲食店がどれだけ街の風景を作っているかが分かります。中華、韓国、インド、ベトナム、トルコ。あの一皿一皿の後ろに、953人の出国者と同じ立場の経営者がいる。制度の適正化と、街の活力。この両立は簡単ではありませんが、少なくとも私たちは「取引先の顔ぶれが変わり始めている」ことを前提に、商売を組み立てる必要があります。
経営者として考えた3つのこと
- 顧客構成を定点観測する。法人のお客様のうち、飲食店がどれくらいか。特定の業種に寄りすぎていないか。年に一度は棚卸しをする。
- 「新規開店」頼みの売上を見直す。開店祝いは花屋のかき入れどきですが、開業の総量が絞られる局面では、既存のお店との長い付き合い──定期の生け込みや植物のメンテナンス──の比重を上げていくべきです。
- 制度の変化はスピードが速いと心得る。資本金要件が6倍になり、申請が96%減る。制度は一夜で商流を変えます。自分の業界に関わる制度改正のニュースは、面倒でも一次情報を追う。この日記も、その積み重ねのつもりで書いています。
よくある質問(FAQ)
Q. 在留資格「経営・管理」とは何ですか?
外国人が日本で会社を設立・経営したり、事業の管理業務に就いたりするための在留資格です。2025年末時点の在留者は4万6781人と、5年前の1.7倍に増えていました。
Q. 2025年10月の厳格化で何が変わったのですか?
法人の資本金要件が500万円から3000万円に引き上げられたほか、3年以上の経営・管理経験か修士以上の学位、常勤職員の雇用、一定の日本語能力などが義務付けられました。厳格化以降5カ月間の申請件数は直前の5カ月間と比べて約96%減ったと入管庁が明らかにしています。
Q. すでに日本で経営している外国人はどうなりますか?
入管庁は2028年10月までは新基準を満たさなくても在留期間の更新を認め、それ以降も基準を満たす見通しが立っていれば許可する可能性があると説明しています。ただし、経営実態などの審査は従来より厳しくなったとの声も報じられています。
Q. 中小企業や街の商売にはどんな影響がありますか?
外国人経営の店舗や企業が廃業すれば、原材料の卸元、事業用不動産のオーナーなど取引のある日本企業にも影響が及ぶと指摘されています。飲食店の開業が減れば、開店祝いの花や店舗装飾のような周辺需要も細ります。
制度の数字の向こうには、一軒一軒のお店と、そこに通うお客さんの顔があります。街の変化は、花の注文書にいちばん正直に表れる。今日もそのつもりで、注文書の一枚一枚を見ています。
GORI