こんにちは、GORIです。
花の商売の、いちばん厳しい数字から始めます。日本花き卸売市場協会が今年6月に公表した2025年の花き卸の取扱高は、前年比5%減の3299億円。新型コロナ発生年である2020年に次ぐ低さでした。取扱量が減り、単価も頭打ち。縮小均衡という言葉が、そのまま当てはまる状況です。
ただ、今日はここで終わりません。この数字と同じ時期に、菊を家庭で飾られる花にしようという取り組みが動き出しています。そして来年3月には、1200万人の来場を見込む国際園芸博覧会が開幕します。厳しい数字と、動き始めた手。その両方をお伝えしたいと思います。
花き需要の低迷は、いま何が起きているのか?
数字の中身を見ていきます。
- 2025年の花き卸の取扱高:前年比5%減の3299億円(日本花き卸売市場協会が2026年6月公表)。コロナ発生年の2020年に次ぐ低さ
- 背景:大口の業務用途が年々縮小し、直近は物価高で日用使いも振るわない
- 切り花でとくに顕著:日農平均価格(各地区大手7卸のデータ集計)で見ると、盆や彼岸といった需要期以外は、市場入荷量が平年より少なく、相場も平年を下回ることが常態化
ここが、この問題のいちばん厄介なところです。消費が鈍る→事業者が在庫を絞る→産地も通常期の出荷を減らす。この連鎖を「縮小均衡」と呼びます。誰かが手を抜いているわけではありません。それぞれが合理的に判断した結果、業界全体がじわじわ小さくなっていく。だからこそ、意識して歯止めをかけないと止まらないのです。
生産者は何を求めているのか?
日本花き生産協会は今年6月の総会で、「花き生産の持続的発展に向けた宣言」を決議しました。訴えの中心はこうです。コスト上昇が販売価格に十分反映されていない。そのうえで、食料システム法を念頭に、花き生産を支える適正な価格形成のしくみの創設を求めています。
これは、花を売る側の私にも重い話です。資材も燃料も上がっているのに、売値が上がらない。その差を誰かが飲み込んでいるとしたら、飲み込んでいるのは産地です。再生産可能な価格とは、来年も再来年も同じ花を作り続けられる値段のこと。それが成り立たなければ、いい花は市場から消えていきます。安く買えることを喜んでいる場合ではない、と私は思っています。
あわせて同協会は、需要拡大の取り組み強化も要請しました。「花きの振興に関する法律」は、花き文化の振興を大きな柱に位置付けています。国産の花を安定して届けるために、国は需要喚起にもっと力を入れるべきだ、という主張です。
最大品目の「菊」に、いま何が起きているのか?
そして、この話の中心にいるのが菊です。花きの最大品目でありながら、葬儀の縮小と安価な輸入品の流入で、年々生産額が下がっています。菊が弱れば、花き全体が弱る。それくらい大きな品目です。
いま、菊をめぐって二つの方向から手が打たれています。
ひとつは、輸出です。 トップ産地のJA愛知みなみが今年、米国への輸出を本格化させました。日本の高品質な輪菊は評価がよく、しかも海外には「菊は仏花」という先入観がありません。だから伸びしろが大きい。この視点は、なるほどと膝を打ちました。私たちが当たり前だと思っている菊の役割は、日本の中だけの常識なのですね。
もうひとつは、国内でのイメージの塗り替えです。 生産・流通・小売りが連携するフラワー需給マッチング協議会が、輪菊のブランド価値を再構築しようと、交流サイトの「ルームクリップ」と連携。モニターの方におしゃれに飾った輪菊を投稿してもらい、仏花のイメージを破る魅力を広げていく取り組みです。
花屋として、この「飾り方から変える」という発想には賛成です。輪菊は、あの丸くて厚みのある花姿が本当に美しい。花もちも抜群にいい。仏花の枠から出して、白い壁の前に一輪だけ生けてみてください。驚くほど現代的な顔をします。菊が地味なのではなく、菊の見せ方が固定されていただけだと、私は思っています。
2027年国際園芸博覧会は、追い風になるのか?
来年3月から始まる2027年国際園芸博覧会は、1200万人の来場を見込む大きな舞台です。
期待されている役割は三つあります。夏季も高品質な国産花きを国内外にアピールする場にできること。自治体出展を通じて、産地ごとに特色ある花や緑を消費者に知ってもらえること。そして来場者に地域の花のファンになってもらい、輸出の拡大にも結び付けることです。
花は嗜好品です。だからこそ、何かのきっかけで需要が伸びる可能性を秘めています。1200万人が花と緑を見に来る。この機会をただのイベントで終わらせるのは、あまりにもったいない。
私たち一軒の花屋にできることは、大きくはありません。ですが、店に来てくださった方に、その花の名前と、どこで誰が作ったのかを一言添えてお渡しすることはできます。菊を一輪、仏花ではない顔で提案してみることもできます。業界全体のうねりは、結局そういう一本一本の積み重ねでしかつくれない。3299億円という数字を前にしても、私はそう思っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 2025年の花き卸の取扱高はいくらでしたか?
日本花き卸売市場協会が2026年6月に公表した数字で、前年比5%減の3299億円でした。新型コロナ発生年の2020年に次ぐ低さです。
Q. なぜ花の需要が低迷しているのですか?
大口の業務用途が年々縮小傾向にあることに加え、直近は物価高で日用使いも振るわないためです。消費が鈍り、事業者が在庫量を絞り、産地も通常期の出荷を減らす「縮小均衡」に陥っています。
Q. 生産者団体は何を求めているのですか?
日本花き生産協会は2026年6月の総会で「花き生産の持続的発展に向けた宣言」を決議し、コスト上昇が販売価格に十分反映されていないとして、食料システム法を念頭に「花き生産を支える適正な価格形成のしくみ」の創設を求めました。
Q. 菊の生産額はなぜ下がっているのですか?
葬儀の縮小と、安価な輸入品の流入が主な要因です。菊は花きの最大品目のため、この落ち込みは業界全体に影響します。
Q. 菊を元気にするための取り組みには何がありますか?
JA愛知みなみが2026年に米国への輸出を本格化させたほか、フラワー需給マッチング協議会が交流サイト「ルームクリップ」と連携し、おしゃれに飾った輪菊を投稿してもらうことで仏花のイメージを破る取り組みを進めています。
Q. 2027年国際園芸博覧会はいつからですか?
2027年3月から始まり、1200万人の来場を見込んでいます。国産花きを国内外にアピールする場として期待されています。
数字は厳しい。それでも、花を好きになるきっかけは作れる。今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI