市場は14%伸びたのに、シェアは落ちた──アマゾンが日本の作品に2倍投資する話と、花屋の棚

市場は14%伸びたのに、シェアは落ちた──アマゾンが日本の作品に2倍投資する話と、花屋の棚

こんにちは、GORIです。

2026年9月3日、東京・港区でアマゾンの動画配信「プライム・ビデオ」が戦略発表会を開きました。日本で制作する独自作品への投資額を、2028年に2026年比で2倍超に増やすという発表です。日本責任者の大石圭介氏は、非常に大きな額になる、継続して投資すると語ったと報じられています。

私は花屋です。ドラマは作りません。それでもこの記事から目が離せなくなったのは、添えられていた市場シェアの数字のほうでした。

6017億円の市場で、いったい何が起きているのか?

調査会社ジェムパートナーズによると、2025年の国内の定額制動画配信サービスの市場規模は6017億円で、前年比14%増。しっかり伸びている市場です。

そのなかでのシェアが、こうなっていました。

  • ネットフリックス 27.1%(前年から+5.6ポイント・7年連続の首位)
  • U-NEXT 17.1%(前年から−0.8ポイント
  • プライム・ビデオ 12.1%(前年から−1ポイント・3位)
  • ディズニープラス 8.4%/DAZN 8.2%/Hulu/dアニメストア/その他(Lemino、FODなど)

ここで手が止まりました。市場は14%も伸びているのに、2位と3位はシェアを落としているのです。

売上そのものは、市場が伸びたぶん増えているかもしれません。それでも順位は守れていない。伸びている場所にいることは、勝っていることを意味しない——この数字は、それを容赦なく示しています。

花の世界にいる私には、これがまったく他人事に思えませんでした。市場の追い風があるうちは、多少の差は見えません。けれど誰か一人が突き抜けたとき、「伸びている市場で相対的に負けている」という、いちばん気づきにくい負け方が始まるのだと思います。

アマゾンは、これから何を作るのか

発表された内容は、はっきりしていました。主に20歳前後の若者向けの作品です。

  • 「ブレス」……漫画原作の実写ドラマ。俳優の大西流星さんが演じる主人公が、メイクアップアーティストの夢を追うなかでの葛藤と成長を描く。2027年春240を超える国や地域で独占配信
  • 「初めての恋人になってください」……「アンスクリプテッド」と呼ばれる台本のない形式の作品。男女10人が初めての恋愛相手を見つける。2027年夏配信。展開が読めず、内容が生々しくなる点が魅力とされています。

プライム・ビデオ副社長で国際統括のケリー・デイ氏は、次のグローバルヒット作は日本から生まれると確信していると述べたそうです。日本の作り手にとっては、心強い話だと思います。

そしてもうひとつ。プライム・ビデオはもともと、有料会員サービス「アマゾンプライム」の特典のひとつでした。ここへ大きな投資に踏み切るのは、会員を獲得する入り口としての役割が大きくなっているからだと報じられています。つまり作品は、それ自体が売り物であると同時に、入口でもある。ここは覚えておきたいところです。

ネットフリックスの強さは、どこから来たのか

一人勝ちの側も見ておきます。

ネットフリックスは、コロナ禍の巣ごもり需要をいち早く取り込んで、強固な会員基盤を作りました。世界で3億人超の会員から得られる料金収入をコンテンツ制作に投じ、韓国の「イカゲーム」のようなヒット作を生み出してきた。日本でも2026年4月配信のドラマ「地獄に堕ちるわよ」など話題作を制作しています。さらに、東宝系の制作スタジオ「東宝スタジオ」の新施設を2028年から賃借し、従来の2倍以上の作品を撮影できるようにするとのことです。

お金を作品に回す。作品が会員を呼ぶ。会員がまたお金を生む。 この輪が回り始めると、外から追いつくのは容易ではありません。アマゾンの2倍投資も、この輪に割って入るための投資だと読めます。

ここからが本題です。花屋の棚も、まったく同じ構造をしている

私がこの記事を読みながらずっと考えていたのは、うちの店の棚のことでした。

GORI STORE TOKYOで扱っている植物の多くは、一点ものです。同じ株は二つとありません。形も、曲がり方も、傷の位置も違う。つまり一株一株が、うちにしかない作品なのです。

そして記事の最後には、配信サービスの弱点がはっきり書かれていました。見たい作品を見終わったら、解約してしまう利用者も少なくない、と。

これ、そのままです。欲しかった株を手に入れたお客様は、そこで来なくなる。 花屋も植物店も、まったく同じ問題を抱えています。だから答えも同じで、新作を切らさないこと。入荷を止めないこと。次に会いに来ていただける理由を、棚の上に置き続けることです。

ただ、ここで私は少しだけ胸を張りたい。配信各社は、新作を出し続けるために年に何百億円という制作費を投じています。花屋は、季節が勝手に新作を出してくれる。 春には春の、秋には秋の顔がある。同じ植物でも、去年の株と今年の株は違う姿をしている。コンテンツを作る費用が要らない商売というのは、考えてみればとんでもなく恵まれています。

ガンダムのプラモデルに、直接つながるという話

もうひとつ、面白い取り組みが紹介されていました。

アマゾンはアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズの配信にあわせ、プライム・ビデオからEC上のプラモデルのページに直接つながるようにして、ファンの利便性を高めてきたそうです。作品で好きになった人が、そのまま関連する商品にたどり着ける。コンテンツと商品が、地続きになっているわけです。

……これ、私がいまやっていることでもあります。

このGORI日記で植物の話を書いて、読んでくださった方が、その株のページに行ける。産地の話を読んで、その国の植物を見に来ていただける。世界最大級の企業と同じ構造のことを、花屋が一人でやっている。そう思うと、少し愉快な気持ちになりました。

では、花屋にとっての「オリジナル作品」とは何か

シェアを落とした側と、伸ばした側。分かれ目は、独占して提供できる中身があるかどうかでした。品揃えでも、価格でも、便利さでもない。そこでしか会えないものがあるかどうかです。

花屋にとってのオリジナル作品は、値引きでも、大量の在庫でもないと私は思っています。うちでしか会えない一株であり、その株がどこから来て、どんな環境で育ったのかを語れることです。だからGORI STORE TOKYOでは、植物に原産国のタグを付けています。この株は、地球のどのあたりで、どんな乾いた風に吹かれて、この形になったのか。それは値札には書けない情報で、他店が簡単にコピーできる情報でもありません。

市場が伸びていても、独自のものがなければシェアは落ちる。6017億円の世界が教えてくれたことは、たぶん花屋にもそのまま当てはまります。

よくある質問(FAQ)

Q. 国内の動画配信サービスの市場規模はどれくらいですか?
調査会社ジェムパートナーズによると、2025年の定額制動画配信サービスの国内市場規模は6017億円で、前年比14%増でした。

Q. 動画配信サービスのシェアはどうなっていますか?
2025年時点でネットフリックスが27.1%で7年連続の首位、U-NEXTが17.1%、プライム・ビデオが12.1%で3位です。前年比ではネットフリックスが5.6ポイント上昇した一方、U-NEXTは0.8ポイント、プライム・ビデオは1ポイント下げています。以下、ディズニープラス8.4%、DAZN8.2%、Hulu、dアニメストアなどが続きます。

Q. アマゾンは日本でどんな作品を作るのですか?
主に20歳前後の若者向けの作品です。漫画原作の実写ドラマ「ブレス」を2027年春に240超の国や地域で独占配信するほか、台本のない「アンスクリプテッド」形式の「初めての恋人になってください」を2027年夏に配信予定です。日本で制作する独自作品への投資額は、2028年に2026年比で2倍超に増やす方針が示されています。

Q. 市場が伸びているのにシェアが落ちるのは、なぜ起きるのですか?
市場全体の成長より自社の成長が遅いと、売上が増えていてもシェアは下がります。動画配信では、独占して提供できるヒット作の有無が会員の増減を左右しました。差別化できる中身がないまま市場の追い風だけに乗っていると、伸びている市場のなかで相対的に負ける状態になります。

伸びている場所にいるだけでは、順位は守れない。6017億円の市場が、それを数字で見せてくれました。

花屋にできることは、たぶんとてもシンプルです。うちでしか会えない一株を、切らさずに置き続けること。 季節という無料の脚本家がついているのですから、私たちはずいぶん恵まれた商売をしているのだと思います。

今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。

GORI

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