こんにちは、GORIです。
あなたは今日、何を聴きながら過ごしましたか?
SpotifyやApple Musicで流れてくる音楽。そのひとつひとつの裏側で今、巨大なビジネスの地殻変動が起きています。
世界の音楽大手で何が起きているのか
世界の音楽市場を牛耳るのは、3つの巨人です。
- ユニバーサル・ミュージック・グループ(オランダ上場)
- ワーナー・ミュージック・グループ(米ナスダック上場)
- ソニー・ミュージックエンタテインメント(ソニーグループ傘下)
各社はアーティスト契約から楽曲制作、マーケティング、配信まで一気通貫で担う、音楽業界の総合商社です。
ところが今、この3社の株価がさえません。ユニバーサルはこの1年で約3割下落。ワーナーも約1割下落。業績低迷に加え、ついにアクティビスト(物言う株主)が動きました。著名投資家ビル・アックマン氏が率いるファンドが4月、約10兆円規模の買収提案をユニバーサルに行うという異例の事態になっています。
2つの壁——AIとストリーミングの鈍化
壁① 生成AIによる価値毀損
音楽生成AIは、スタイルや歌詞を入力するだけで自動で楽曲をつくります。問題は、既存の人気楽曲に酷似した音楽が無断で生成されてしまうこと。本来受け取るはずの配信料や著作権料が減るリスクが現実になりつつあります。
壁② ストリーミング成長の鈍化
音楽業界を救ったはずのストリーミング市場にも陰りが見えています。スポティファイが4月に発表した決算では、欧州・北米の成長鈍化により、次の四半期の見通しが市場予想を下回ると発表。株価は一時約10%下落しました。
それでも「著作権」が最後の砦になる
ピンチの中にも、光があります。
音楽大手が持つ最大の武器は、楽曲の著作権——「音楽出版権」です。売上高の約2〜3割を占める安定収益源で、ソニー・ミュージックは545万曲を管理し、音楽出版では世界最大手。
AIが台頭しても、この「楽曲の権利」そのものの価値は消えません。むしろ、AI企業に楽曲を学習データとして提供しライセンス料を徴収するという新ビジネスモデルが生まれています。
大手3社はすでに2025年11月、米AI新興企業クレイ・ビジョンとライセンス契約を締結。数千曲を学習に使ったAI構築で合意しました。
技術に負けた過去が、今の強さをつくった
音楽業界がAIに比較的積極的なのには理由があります。
1990年代、ナップスターなどのファイル共有サービスが氾濫し、CD主体のビジネスモデルは崩壊しました。そのどん底から業界を救ったのが、ストリーミング配信の登場。テイラー・スウィフトらアーティストが先導し、「配信企業が楽曲利用料を支払うモデル」を業界全体で勝ち取ったのです。
技術の波に飲み込まれるのではなく、自らルールを設計して主導権を握る。
これが音楽業界のDNAです。ワーナーのCEOが「AIが黎明期の今こそ、ビジネスモデルを作って未来を切り開く時だ」と言い切るのも、この歴史があるからです。
経営者として、ここから何を読むか
どの業界も今、AIという波に直面しています。
音楽業界が示す教訓は明快です。
自分たちが持つ「資産」が何かを正確に把握し、新技術との付き合い方を自ら設計する。
音楽大手にとっての資産は「楽曲の著作権」でした。あなたのビジネスにおける「著作権」に相当するものは何でしょうか。顧客との信頼関係? 独自の技術やノウハウ? 長年積み上げたブランド?
AIに仕事を奪われるより先に、AIと組んで収益化する側に回る。それができる経営者だけが、次の時代を生き残ると思っています。
GORI