こんにちは、GORIです。
個人向け国債の利率が、過去最高を更新しました。固定金利型5年は2.24%(9月募集分)。銀行の普通預金の利率が軒並み0.4%にとどまるなかで、元本割れしない国債に2%を超える利率がつく。日本経済新聞の連載「市場動かす個人向け国債」は、この変化が債券市場まで動かし始めていると報じていました。
記事の冒頭に、こんな場面が出てきます。2026年7月、ある家族が、個人に資産運用を助言するファイナンシャルスタンダード(東京・千代田)の福田猛代表を訪ねた。相談は、70代の親の余剰資金をどうするか。積極的に運用したくはない、でも預金のままではもったいない。福田氏が勧めたのは、10年物の変動金利型の個人向け国債でした。福田氏によれば、2年前はほぼゼロだった個人向け国債の問い合わせが、ここ数カ月で数十件寄せられるようになったそうです。
先にお断りしておきます。私は花屋で、金融の専門家ではありません。この記事は、特定の商品をおすすめするものではありません。それでも、世の中のお金の置き場所が動き始めているという事実は、経営者として見過ごせない。今日はその話です。
個人向け国債の利率は、いまどれくらい?
- 固定金利型5年:2.24%(9月募集分ベース・過去最高)
- 変動金利型10年:1.95%(同・過去最高)
背景にあるのは、日銀が利上げを加速するとの観測です。政策金利の動きに左右されやすい中期の金利が市場で上がり、それに呼応して個人向け国債の利率も上がり続けています。
比べる相手を並べると、見え方がガラッと変わります。
- 銀行の普通預金:軒並み0.4%
- 定期預金5年:1%程度が多い(ネット銀行など高めのところでも、多くは2%に届かない)
- 東証プライム上場企業の配当利回り(加重平均):2.1%程度
株の配当利回りより、元本割れしない国債の利率のほうが高い。 長い低金利の時代を見てきた身からすると、ちょっと信じられない並びです。
どれくらいの人が買っているのか?
人気は数字にはっきり出ています。財務省によると、2026年度(9月まで)の個人向け国債の発行額は5.1兆円。前年度1年間の6.1兆円に、半年で迫っています。2002年度の発行開始以来の最高は7.2兆円で、これも視野に入ってきました。JPモルガン証券は、2027年度の発行額が11兆円と過去最高になると見込んでいます。
個人向け国債だけではありません。SBI証券は2025年9月から、市場で調達した40年物の国債を個人に販売し始めました。4%程度という利率が投資経験者も引きつけ、2026年3月時点の国債の預かり残高は1020億円。個人向け国債の2割程度まで膨らんでいると報じられています。
国までもが、「安定した買い手」を求めている
この記事で、私がいちばん唸ったのはここでした。個人向け国債の拡充は、国債の安定した買い手の確保につながるとして、プロの投資家も注目しているというのです。
いま、こんな議論が進んでいます。
- 国債をNISA(少額投資非課税制度)の対象に加える案や、相続税の優遇措置。金融庁も税制改正要望に盛り込みました。高齢者や富裕層の預貯金を国債に呼び込もうという策です。
- 物価連動型の商品や、高利回りが期待できる超長期の商品の導入を求める声(財務省「国の債務管理に関する研究会」のまとめより)。
- 固定5年と変動10年の利率の逆転を直すため、計算方法を改めるべきだという指摘。
つまり国が、個人のお客様に向けて、商品を磨き、買いやすくする工夫を始めているわけです。
企業も同じ動きをしています。2026年度の個人向け社債の発行額は約2.5兆円と、前年度(2.7兆円)を上回る勢い。ソフトバンクグループは最大規模となる1兆円の個人向け社債を発行し、7年債で利率4.75%。国も大企業も、個人のお金に頼る度合いを強めているのです。
前日の記事「値上げできるのは、ファンがいるから」で、私はアップルの「固定客頼み」について書きました。安定した買い手がほしいのは、世界一のスマホメーカーも、国も、花屋も同じ。お客様に選び続けていただくために、国ですら商品を磨いている。 商売をする者として、背筋が伸びる思いです。
万能ではない、と記事もはっきり書いている
もちろん、いいことばかりではありません。記事は注意点も並べていました。
- 元本割れしない一方で、高い運用収益を狙う商品ではない。
- インフレ率が利率を上回れば、実質的な資産価値は目減りする。
- 途中で換金するときは利子相当額が差し引かれるため、より高い金利の商品に乗り換えにくい面もある。
- 個人向け社債は一般に元本保証の仕組みがなく、発行体の信用リスクも国と比べれば高いものが目立つ。
インフレの話は、花屋として実感があります。花の仕入れ値も、資材も、人件費も上がり続けている。2%の利息がついても、物の値段がそれ以上に上がれば、買える花の本数は減ってしまう。数字の見た目だけで判断してはいけない、というのは、お金の話でも花の話でも同じだと思います。
花屋の経営者として、いちばん気になったこと
記事の終盤に、こんな指摘がありました。預金から国債への過剰なシフトはリスクもはらむ。規模の小さい金融機関では、預金の流出を防ぐための金利引き上げが、経営体力をそぎかねない。
これは、先日の記事「17の信用金庫が赤字に」で書いた話の続きです。信用金庫は、預金を増やしたくても伸び悩み、かといって預金金利を上げれば利ざやが縮むというジレンマを抱えていました。そこへ、預金が国債へ流れていく動きが加わる。地域の中小企業にお金を貸してくれる金融機関の体力が、また一つ削られるかもしれないのです。
預ける側にとって、金利がつくのは嬉しい話です。けれど、借りる側の中小企業にとっては、お金を借りるコストが上がっていく世界でもあります。預金や国債の利率が上がるということは、世の中のお金の値段が上がるということだからです。
だから私は、自分にこう言い聞かせています。借入の金利は上がっていく前提で、事業の採算を組む。 取引のある金融機関とは、困ったときではなく平時から、しっかり向き合っておく。そして、会社の手元のお金をどこに置いておくかも、金利ある世界では立派な経営判断になる。ぼんやりしていると、知らないうちに損をする時代が来ています。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人向け国債の利率は、いまどれくらいですか?
2026年9月募集分ベースで、固定金利型5年が2.24%、変動金利型10年が1.95%です。いずれも過去最高を更新しました。日銀が利上げを加速するとの観測から、中期の金利が上昇していることが背景にあります。
Q. 預金や株の配当と比べるとどうですか?
銀行の普通預金の利率は軒並み0.4%、定期預金は5年物で1%程度が多いとされます。東証プライム上場企業の配当利回り(加重平均)は2.1%程度で、固定5年の個人向け国債の利率のほうが高い水準です。ただし株は価格が変動し、国債は元本割れしない代わりに高い運用収益を狙う商品ではないなど、性格が異なります。
Q. 個人向け国債に注意点はありますか?
インフレ率が利率を上回ると、実質的な資産価値は目減りします。また途中で換金する際には利子相当額が差し引かれるため、より高い金利の商品へ乗り換えにくい面もあります。実際に購入を検討する場合は、ご自身の状況に合わせて専門家や金融機関にご相談ください。
Q. 個人向け国債はNISAの対象になりますか?
2026年9月時点では議論の段階です。国債をNISAの対象に加える案が浮上しており、金融庁も税制改正要望に盛り込んだと報じられています。
Q. 個人向け国債の人気は、中小企業に関係がありますか?
関係があります。預金から国債への移動が進みすぎると、規模の小さい金融機関は預金流出を防ぐために金利を引き上げざるをえず、経営体力が削られる恐れがあると指摘されています。地域の中小企業にとっては、取引金融機関の融資余力や借入コストに影響しうる話です。
お金の置き場所が変わると、世の中のお金の流れが変わります。その流れの先には、必ず私たちのような小さな会社がいる。「5年で2.24%」という数字は、預ける人だけでなく、商売をするすべての人に向けたメッセージなのだと思います。
※本記事は報道をもとに筆者の考えを述べたもので、特定の金融商品の購入をおすすめするものではありません。
今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI