こんにちは、GORIです。
神戸に、「桜のトンネル」という場所があります。
摩耶ケーブル駅近くの坂道に沿って、樹齢70〜80年のソメイヨシノが並ぶ名所。その桜が今、伐採されています。
半数以上の木が、空洞だった
神戸市が2025年度に市内全ての街路樹を緊急点検しました。
結果、桜のトンネル48本のうち25本以上で幹の内部が空洞化していることが判明。倒木リスクが高いと判断され、伐採が進んでいます。
市全体では約10万本のうち、約1万5千本に倒木の恐れがあると診断されました。
この光景を見守った地元の画家・北山さん(72)の言葉が刺さりました。
「4月の満開を最後の姿として絵に残した」
危険を減らすためには仕方がない、と言いながら残念そうな表情で。その言葉に、木と人の関係の深さを感じました。
なぜ今、一斉に老木化しているのか
理由はシンプルです。
高度経済成長期1950〜70年代に、全国各地の道路や公園に大量の樹木が植えられました。あれから50〜70年。その木たちが、いっせいに老齢期を迎えています。
ソメイヨシノは特に寿命が短く、一般的に60〜80年で老齢期に達すると言われています。美しい桜並木を作るために選ばれた品種が、今その寿命を迎えている。
皮肉と言えば皮肉ですが、これは誰かのミスではありません。時間が経てば、木も老いる。それだけのことです。
数字で見る、倒木の現実
国土交通省の調査によると、2021年4月〜2024年11月の3年半で1732件の倒木・枝折れが発生。そのうち110件で人身事故が起きています。
さらに驚いたのはこの数字。
道路沿いの街路樹管理者のうち、定期巡回(近くで目視確認)を実施していたのはわずか43%。半数以上がパトロール車からの「ながら確認」のみでした。
木は外から見ても、内部の空洞はわかりません。近づいて、叩いて、専門家が診てはじめてわかる。
樹木医という仕事
この問題を最前線で支えているのが樹木医です。
茨城県牛久市の伊藤瞳さん(41)は、根元の状態・幹の空洞・樹皮欠損などを重視しながら診断を行います。4月には千葉県内で約350本を点検。点検と剪定を同時進行で行う現場スタイルで、効率と精度を両立させています。
さらに最近ではドローン+AI解析による点検も始まっています。上空から撮影した画像をAIで解析し、枯れた木の位置や高さを特定する技術。神戸電鉄が導入し、目視では確認できなかった木の状態を効率的に把握できるようになりました。
植物と向き合う者として
花屋として、そして植物を扱う仕事として、この問題は他人事ではありません。
木は時間をかけて育ちます。伐採された桜の代わりに若木を植えても、頭上を覆うまでに10年以上かかると言われています。
今伐採される木たちは、誰かが植えてから70〜80年後の今日のために植えたわけじゃない。でも結果として、その木は70〜80年間、その場所の風景をつくり続けてきた。
木は、そこにあることで記憶になる。
盆栽師の酒井さんが「5年先を見て枝を整える」と言っていたように、木と向き合うには時間の感覚が必要です。植える人と、恩恵を受ける人が違う。それでも植える。それが植物と人間の関係だと思っています。
私たちにできること
千葉大学の竹内准教授はこう言っています。
「住民自らが樹木の急な変化に気づき注意を払うことが、倒木事故を未然に防ぐことにつながる」
専門家に任せるだけじゃなく、日常の中で木を「見る」習慣を持つこと。葉の色がおかしい、幹にキノコが生えている、根元がぐらついている——そういった変化に気づける目を持つことが大切です。
植物好きの視点は、安全にもつながる。そう思っています。
神戸の桜のトンネル、来年1月には若木が植えられます。
次の世代が「桜のトンネル」と呼ぶ日が来るまで、10年以上かかる。でも、きっと来ます。
GORI