こんにちは、GORIです。
ファミリーマートが、朝の時間帯だけのセット割引を始めました。9月15日から一部地域を除く全国で、午前5時から11時の間、パンやおにぎりと飲み物を一緒に買うと250円。単品で買うより最大145円安くなります。私は毎朝コンビニの前を通って店に向かう人間ですから、思わず足が止まりました。250円という値段もそうですが、それ以上に「これは期間限定ではなく、続ける施策だ」と担当者が言い切ったところに、私は経営の本気を見ました。
「朝ファミマのコンビ割」とは何か?
日本経済新聞の記事から、中身を数字で整理します。
- 時間帯:午前5時〜11時。
- 値段:対象のパン・おにぎりと、対象の飲み物をセットで買うと250円。最大145円引き。
- 対象:「手巻紀州南高梅」や「生コッペパン」といったおにぎり・パンと、プライベートブランド「ファミマル」のコーヒーや紅茶など、計22品。
- 位置づけ:これまでの割引企画は期間限定だったが、今回は継続施策。「ファミマではお得な買い物ができる」という点を定着させたい、と商品企画・SV連携室長の西森康浩氏。
狙いは、はっきり「客数」です。「通勤、通学客らを取り込み、来店頻度を上げることで客数増につなげたい」と西森氏は述べています。
なぜ、いま客数なのか?
ここが、この記事でいちばん花屋が見るべきところです。
- ファミマの8月の既存店客数は前年同月比2.9%減。ローソン(0.6%増)、セブン―イレブン(1.9%減)と比べても見劣りし、13カ月連続で前年割れ。
- 一方で客単価は前年同月比2.8%増。こちらは47カ月連続で前年超え。
- 業界全体でも、日本フランチャイズチェーン協会の調査で7月の既存店平均客単価は755.7円、前年比2.3%増で19カ月連続のプラス。
つまり、一人あたりが払う金額は上がり続けているのに、来る人の数は減り続けている。物価高で単価が上がった分、スーパーなどに比べた割高感が強まり、客が足を遠ざけている。ファミマは値段据え置きで内容量を約45%増やす増量企画や、靴下・Tシャツなど衣料品の拡充、店内広告の強化までやってきましたが、客数の回復は道半ばだ、と記事は書いています。
私はこれを読んで、うちの数字を思い浮かべました。花屋も、まったく同じ構造だからです。仕入れ値が上がり、輸送費が上がり、人件費が上がり、売価を上げざるをえない。客単価は上がる。でも、「気軽に一本」のお客様が減る。単価の上昇で客数の減少を隠してしまうと、気づいたときには店の前を通る人が変わっている。ファミマの13カ月という数字は、その怖さを教えてくれています。
朝食は、なぜ「取り合い」になっているのか?
もう一つの背景は、朝食市場そのものが伸びていることです。
- 調査会社サカーナ・ジャパンによると、外食業態の朝食市場は2024年10月〜2025年9月で5347億円。2018年10月〜2019年9月と比べて25%増。
- 理由は出社回帰。在宅勤務から出社に切り替える会社員が増え、働き方改革で朝型勤務を勧める会社も増えた。共働き世帯の増加も追い風で、「家でゆっくり食べる時間がなくなった」というのが同社の見立てです。
- 日本マクドナルドは「朝マック」で早くから朝を開拓。モスフードサービスは3月に「朝モス」を刷新し、4〜6月は時間帯別で朝の伸び率が最も高かった。サイゼリヤは2025年に「朝サイゼ」を始め、焼きたてのフォカッチャやパニーニとドリンクバーのセットを300〜400円台で出して、実施店は全国23店舗に広がった。
- コンビニも動きました。ローソンは9月8日から21日までの2週間限定で、パンと店頭コーヒーの同時購入で30円引きの「朝に寄ろーそん」。セブンも3月に3日間限定で「朝セブン」。
ここで目を引くのは、ローソンとセブンが「限定」なのに対し、ファミマが「継続」を選んだことです。話題づくりの割引は、終わればお客様も戻ります。「あの店は朝、いつも安い」という習慣にまで持っていけるかどうか。来店頻度を上げたいなら、期間限定ではダメだという判断が、ここに出ています。
2027年4月の消費税減税が、なぜコンビニに追い風なのか?
記事の最後に、もう一段の背景がありました。政府は2027年4月から2年限定で、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる方針です。外食は10%のまま据え置き。つまり、コンビニやスーパーの弁当・総菜は1%、外食は10%という、9ポイントの税率差が生まれる見通しです。ファミマはこの減税もにらんで、朝食のセット割を客数回復の起爆剤にしようとしています。
ここで花屋として、正直に書いておきます。花は飲食料品ではありません。 2019年に軽減税率が入ったときも、花は10%のままでした。今回の方針がそのまま進めば、花はまた対象外です。隣のコンビニのおにぎりは1%、うちの一輪は10%。この差は、店頭で確実に効いてきます。「iPhoneが値上げになっても固定客は買う」という話を先日書きましたが、あれは「どうしてもこれが欲しい」という人がいる商品の話。花は、その日の気分で買うか買わないかが決まる商品です。だからこそ、税率で不利になる分を、来店の理由で取り返すしかない。
花屋は「来店頻度」をどう上げるか
では、花屋に置き換えると何ができるか。ファミマの施策から、私が受け取った3つの原則を書きます。
1. 時間帯を絞る。
一日中安くする必要はありません。ファミマは5時から11時だけです。花屋なら、たとえば通勤の時間帯に、店の前を通る人が手に取りやすい「朝の一本」をつくる。会社のデスクに、家の食卓に、一本だけ持って帰ってもらう。一日中やる値下げは利益を削るだけですが、人通りがある時間だけの値付けは、来店の習慣をつくる投資になります。
2. セットにする。
コンビニは「パン+飲み物」で250円。単品の値下げではなく、組み合わせで得を出しています。花屋なら、花+小さな花瓶、鉢+受け皿、観葉植物+最初の1カ月の水やりカード。単品で値引きすると安売りに見えますが、組み合わせに値を付けると「お得」に見える。しかも一緒に買ってもらえるので、客単価は落ちません。ファミマが客単価を守りながら客数を取りに行けるのは、この設計だからです。
3. 続ける。
これがいちばん難しい。花屋のセールも、母の日や年末の期間限定ばかりです。でも来店頻度を上げたいなら、「あの店は、いつ行ってもこれがある」という定番にしないといけない。ファミマが「一時的な話題性に留まることなく」と言ったのは、まさにそこです。
以前「ファミマのコーラが『飾るために買われる』」という記事で、コンビニが「欲しいから来る店」になろうとしている話を書きました。今回は「お得だから毎朝来る店」への挑戦です。方向は違っても、狙っているのは同じ来店の理由づくり。花屋がコンビニから学ぶことは、まだまだあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 「朝ファミマのコンビ割」とは何ですか?
ファミリーマートが2026年9月15日から一部地域を除く全国で始めた朝の時間帯のセット割引です。午前5時から11時の間に、対象のパン・おにぎりと対象の飲み物を一緒に買うと販売価格が250円になり、最大145円安くなります。対象は「手巻紀州南高梅」「生コッペパン」などと、プライベートブランド「ファミマル」のコーヒー・紅茶を含む計22品です。期間限定ではなく継続施策です。
Q. ファミマはなぜセット割を始めたのですか?
来店客数を底上げするためです。2026年8月の既存店客数は前年同月比2.9%減で13カ月連続の前年割れでした。一方で客単価は2.8%増と47カ月連続で上がっており、割高感が客数低迷の一因とみられています。通勤・通学客を取り込み、来店頻度を上げることで客数増につなげる狙いです。
Q. 他のコンビニや外食も朝食に力を入れていますか?
ローソンは9月8日〜21日の2週間限定でパンと店頭コーヒーの同時購入を30円引きにする「朝に寄ろーそん」を実施。セブン―イレブンも3月に3日間限定で「朝セブン」を行いました。外食ではマクドナルドの「朝マック」に加え、モスバーガーが3月に「朝モス」を刷新、サイゼリヤは2025年から「朝サイゼ」を300〜400円台で提供し全国23店舗に広がっています。
Q. 朝食市場はどれくらい伸びていますか?
サカーナ・ジャパンによると、外食業態の朝食市場規模は2024年10月〜2025年9月で5347億円と、2018年10月〜2019年9月比で25%増えました。出社回帰や朝型勤務の推奨、共働き世帯の増加が背景です。
Q. 2027年の消費税減税とコンビニの関係は?
政府は2027年4月から2年限定で飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる方針で、外食は10%に据え置かれます。コンビニやスーパーの弁当・総菜と外食の税率差が広がる見通しのため、ファミマは減税もにらんで朝食需要を喚起しようとしています。なお、花は飲食料品ではないため、この方針のままなら減税の対象外です。
Q. 花屋はこの動きから何を学べますか?
時間帯を絞った値付けで来店の習慣をつくること、単品値引きではなく「花+花瓶」のような組み合わせで得を出して客単価を守ること、そして期間限定ではなく続けて定番にすること。この3点がGORIの受け止めです。
朝の250円で、13カ月続いた客数減を止められるか。私は結果を追いかけたいと思います。そして自分の店でも、「客単価が上がっているから大丈夫」と思わないこと。店の前を通る人が、毎朝一本の花を手に取ってくれる。そんな店の作り方を、私はこれからも考え続けます。
今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI