こんにちは、GORIです。
11月2日の日本経済新聞に、「サイバー保険の問い合わせが3倍に増えた」という記事が載っていました。会社のパソコンやサーバー、ウェブサイトがサイバー攻撃を受けたときの損害を補償する保険です。読みながら私の頭に浮かんだのは、店のパソコンでもレジでもなく、花束に添えるメッセージカードでした。花屋は、贈る方のお名前とご住所だけでなく、贈られる方のお名前とご住所、そして気持ちまでお預かりする商売だからです。
はじめにお断りしておきます。この記事は、特定の保険商品をおすすめするものではありません。加入を考えるときは、補償の中身を保険会社や代理店に直接確かめてください。
いま、何が起きているのか
記事で報じられたことを整理します。
- 東京海上日動火災保険では、サイバー保険の契約企業からの相談が急増しています。専用窓口への10月の相談件数は、4〜9月の毎月の平均の3倍になりました。
- 損害保険ジャパンの代理店や営業拠点には、中小企業から「一刻も早く加入したい」という相談が寄せられ始めています。問い合わせは9月と比べて3倍ほど。
- きっかけは、GMOインターネットグループが不正アクセスを受けたこと、そして世界中のウェブサイトで使われているプログラム言語「PHP」で重大な脆弱性が見つかったことです。
- すでに契約している企業からは、保険金の支払い上限を引き上げてほしいという声も出始めました。
- 保険料は契約内容によって違いますが、大手損保によると「一般的には年間数十万円から数百万円」。損保ジャパンによると、売上高30億円の物流企業で月3万円ほどの見込みだそうです。
数字で見るサイバー保険
- 日本損害保険協会によると、サイバー保険を扱う加盟9社の2025年度の契約件数は34万4930件。5年前の5倍です。保険料収入は2倍の497億円。
- 日本経済新聞が大手4社を集計したところ、2026年4〜9月の契約件数は前年同期比6%増の2万6835件、保険料収入は14%増の197億円。10月以降はさらに増えそうだとのことです。
- 加入率は、上場企業などで約6割(KPMGジャパンの2025年の調査)。ところが中小企業は1割ほどにとどまっています(損保協会が2025年に公表した調査)。
- アメリカでは、損保大手トラベラーズが6月に約1200社に聞いたところ、加入率は7割。2018年に調査を始めてから最高でした。
大きな会社の6割と、中小の1割。この差を見て、私は「他人事じゃない」と背筋が伸びました。花屋のほとんどは、中小企業どころか、小さな店です。
花屋が預かっている情報は、思っているより多い
お花のギフトをご注文いただくと、店には次のような情報が残ります。
- 贈る方のお名前、ご住所、お電話番号、メールアドレス
- 贈られる方のお名前、ご住所、お電話番号
- お届けの日と、お誕生日・開店祝い・ご退職・お悔やみといった用途
- メッセージカードの文面
花屋の注文には、人生の節目がそのまま書いてあります。それを、いちばん望まない形で外に出してしまうのが、情報漏洩です。記事によると、サイバー保険では個人情報が流出したときの賠償金や、サービスの利用者に支払う見舞金なども補償に含まれることが多いそうです。お金で埋められる部分は、保険が助けてくれるかもしれません。でも、「あの花屋に頼んだら、贈り先の住所が漏れた」という信頼の傷は、保険では元に戻りません。
しかもこれから、クリスマス、年末年始、そして春の送別シーズンへと、ギフトの注文が一気に増える季節に入ります。注文が多くて慌ただしい時期ほど、すきを突かれやすい。私はそう考えています。
植物も情報も、守りは「予防が9割」
記事の後半で、私がいちばん頷いたのはここです。損保各社が、保険を売るだけでなく、被害を前もって減らす支援に乗り出しています。
- 東京海上日動は6月から、取引先を含むサプライチェーンへの攻撃に備えて、防衛策を点検する事業を始めました。
- SOMPOホールディングスは12月から、サイバー保険の契約企業を対象に、サイバーリスクを無償で診断するサービスを始めます。
- MS&ADインシュアランスグループホールディングスの傘下会社は、大企業の取引先が抱えるサイバーリスクを定期的に知らせるサービスを手がけています。
これ、植物とまったく同じなんです。観葉植物が弱ってから慌てても、できることは限られます。毎朝、葉の色を見る。土の乾き具合を指で確かめる。葉の裏まで覗いて、虫が付いていないかを見る。守りは、何も起きていない日の観察で決まります。保険は、枯れてしまったときに次の一鉢を買い直すお金のようなもの。あれば本当に助かります。でも、保険に入ったからといって、植物が枯れなくなるわけではありません。
米保険仲介大手マーシュの日本法人社長・村山知生氏は、日系の損保が今後、海外にならって加入の条件を厳しくする可能性があると指摘しています。つまり、ふだんの守りができていない会社は、保険に入ることさえ難しくなるかもしれない。予防は、保険に入るための条件にもなっていくわけです。
小さな店でも、今日からできること
特別なことではありません。私が自分の会社で大事にしたいのは、次のようなことです。
- パスワードを使い回さない。二段階認証をかける。 ネットショップ、メール、SNS、全部です。
- 「至急」「ご確認ください」というメールのリンクを、すぐに押さない。 忙しい日ほど、一呼吸。
- お客様の情報を見られる人を、必要な人だけにする。 辞めた人のアカウントは、その日のうちに止める。
- パソコンやスマホの更新を後回しにしない。 今回のPHPのように、穴は見つかったその日から狙われます。
- いざという時の段取りを決めておく。 誰が、どこに、何を連絡するのか。慌てる前に紙に書いておく。
どれも地味です。水やりと同じで、毎日のことです。でも私は、この「地味なことを毎日やり切る」のが大好物です。部活の素振りと同じで、やった分だけ、いざという時に体が動きます。
よくある質問(FAQ)
Q. サイバー保険とは、どんな保険ですか?
会社のパソコンやサーバー、ウェブサイトなどがサイバー攻撃を受けたときに発生した損害を補償する保険です。日本経済新聞によると、顧客の氏名やメールアドレスなどの個人情報が流出したときの賠償金や、セキュリティー対策の強化にかかる費用などが補償され、サービスの利用者に支払う見舞金も補償の範囲に含まれることが多いそうです。補償の中身は契約によって違います。
Q. なぜ今、問い合わせが増えているのですか?
GMOインターネットグループが不正アクセスを受けたことや、世界中のウェブサイトで使われているプログラム言語「PHP」で重大な脆弱性が見つかったことがきっかけと報じられています。東京海上日動では10月の相談件数が4〜9月の月平均の3倍に、損保ジャパンでも問い合わせが9月の3倍ほどになりました。
Q. 保険料はどのくらいですか?
契約内容によって異なりますが、大手損保によると一般的には年間数十万円から数百万円になることが多いそうです。損保ジャパンによると、売上高30億円の物流企業で月3万円ほどの見込みとのことです。
Q. 小さなお店も入った方がいいのでしょうか?
この記事は特定の保険をおすすめするものではありません。必要かどうかは、お店の規模や、お預かりしている情報の量によって変わります。保険会社や代理店に相談するのが確実です。ただ、どんな保険を選ぶにしても、パスワードの管理や更新といった、ふだんの予防が先にあると私は考えています。
Q. お店を名乗る、心当たりのないメールやSMSが届いたら?
リンクを押したり、支払いをしたりする前に、そのお店に直接お電話で確かめてください。メールに書かれた連絡先ではなく、お店の公式サイトなどでご自身で調べた番号にかけるのが安心です。
花は、気持ちを運ぶ仕事です。「おめでとう」も「ありがとう」も「お疲れさまでした」も、私たちは花と一緒にお預かりして、お届けしています。だから、そのお名前とご住所も、花と同じくらい大切に扱いたい。保険を考えることは大事です。でも、その前に、毎日の守り。植物の水やりと同じように、地味なことを、毎日、やり切ります。
今日も、あなたの一日に緑と花がありますように。
GORI